2005 Fiscal Year Annual Research Report
原子間力顕微鏡を用いたナノ粒子の細胞への取り込みに関する研究
Project/Area Number |
17651033
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
菅野 さな枝 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究領域, NIESポスドクフェロー (50391090)
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / ナノ粒子 / マクロファージ / 肺表面層 / 自動車排気ガス |
Research Abstract |
1.アルカンの模擬ナノ粒子の作成及び形状の観察 カバースリップに蒸着した高級アルカンの形状を原子間力顕微鏡で観察した結果、ナノ粒子状のアルカンが、ほぼ均一に分散し蒸着していた。エンジン燃焼により生成したアルカンは、均一な分散状態のナノ粒子として発生し、生体に取り込まれることが推定された。 2.肺表面層の模擬的モデルへのアルカン沈着の影響 肺表面は1,2-dipalmitoyl-sn-glycero-3-phosphocholine(DPPC)を主成分とする肺界面活性物質に覆われていることが知られている。そこで、肺表面層の模擬的モデルとして、LB法にてDPPCの展開単分子膜を作成した。DPPCの展開単分子膜の形状を原子間力顕微鏡を用いて観察した結果、厚さ1〜2nmの単分子膜を作成できたことより、模擬的な肺表面層モデルとして実験に使えることを確認した。次に、DPPCにC_<20>H_<42>を加え、展開単分子膜を作成し、表面張力を測定することより、膜の安定性を調べた。その結果、C_<20>H_<42>の濃度が高いほど、低い表面圧でDPPCの単分子膜がくずれたことより、C_<20>H_<42>が膜の伸縮性を下げることがわかった。生体内においても、自動車排気ガス由来のナノ粒子中の高濃度のアルカンが肺表面層に接着した時、表面層の伸縮性を減少させ、肺機能の欠損を引き起こす可能性が示唆された 3.蛍光ナノビーズの細胞への取り込み機構の検討 macrophage receptor with collagenous structure(MARCO)を遺伝子導入した細胞では、蛍光ビーズを添加後、すぐに蛍光ビーズと結合し取り込み、蛍光強度は経時的に増加したが、コントロールの細胞では、ほとんど蛍光ビーズの取り込みは見られなかった。このことより、PM2.5だけでなく、ナノ粒子の細胞への取り込みにも、MARCOが関与していることが示唆された。
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