2005 Fiscal Year Annual Research Report
1分子計測を目指した新規非線形ラマン散乱現象の系統的解析
Project/Area Number |
17651069
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉川 裕之 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (00314378)
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Keywords | 近赤外レーザー / 光捕捉 / ハイパーラマン散乱 / 表面増強電場 / 色素分子 / 銀ナノ粒子 / 非線形光学応答 / ハイパーレイリー散乱 |
Research Abstract |
色素が吸着した銀ナノ粒子凝集体に、連続発振近赤外YAGレーザー光を集光すると、高強度のハイパーラマン散乱が観測される新現象を発見した。この新規非線形ラマン散乱現象を種々の試料に適用し、高感度分子分析法としての適用可能範囲、将来性を見極めるため、本年度は以下の研究を遂行し、成果を得た。 1、ハイパーラマン散乱が、レーザーの集光位置に光捕捉された銀ナノ粒子から生じていること、100msよりも短い閃光として断続的に観測されることが分かった。測定精度を上げるためには、測定のゲート時間を短くし、断続的に生じる信号光のみを積算する必要があることが分かった。 2、レーザー強度の増加に伴い、ハイパーラマン散乱強度も非線形に増加するが、およそ40MW/cm^2を越えるレーザー強度ではシグナルの減少が見られた。このように最適なレーザー強度が存在することが明らかになった。 3、ハイパーラマン散乱発生時には、波長540nm〜700nmにかけていくつかのピークをもつブロードな背景光も同時に観測され、背景光のスペクトルが時間的に変化することが分かった。 4、ローダミン6G、ローダミンB、クリスタルバイオレットの3種類の色素分子(濃度0.001mM)のハイパーラマン散乱を測定した。その結果、ローダミン6Gが最もハイパーラマン散乱強度が高く、クリスタルバイオレットでは相対的にハイパーラマン散乱よりもハイパーレイリー散乱強度が高かった。このことから、測定に適した分子として、1)波長532nm(励起光の半分の波長)における吸光度が大きい、2)ハイパーラマン散乱の見られる波長550〜600nmにおける吸光度が小さい、3)銀と錯体を形成しやすいと考えられる孤立電子対をもつ窒素原子が分子内に多く存在する、という条件が重要であると考察した。
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