2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17651098
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
釜井 俊孝 京都大学, 防災研究所, 助教授 (10277379)
|
Keywords | 地盤災害 / 考古学 / 地震 / 液状化 / 地すべり / 古墳 |
Research Abstract |
近年古墳に関する考古学的発掘・調査の結果、墳丘を変形させた地すべり・崩壊の痕跡が発見される例が増加しているが、こうした地すべりについて、地質・地形・地盤工学的調査が行われた例はまだ少数であり、考古学分野を巻き込んだ学際的な検討は萌芽的に始められた段階にある。古墳の変形問題の検討は文化財保護としての意義を有していることはもちろんであるが、その成果は都市防災、地すべりメカニズム論にフィードバックされ、防災上も重要である。本年度は、神戸市西求女塚古墳の事例を検討した。 神戸市東灘区の西求女塚古墳は、扇状地末端から海浜砂層上に位置する三世紀に築造された全長約100mの前方後方墳であり、これまでに墳丘盛土が地すべりによって大きく変形していること及び、墳丘を貫く噴砂痕の存在が明らかにされている。崩壊した墳丘盛土が、16世紀後半の遺物を含む地層を直接覆っていることから、地すべりの発生時期は16世紀後半以降であり、誘因として1596年の慶長伏見地震が推定されている。 後方部南西角の大規模な地すべりは、古墳基礎地盤の激しい液状化によって墳丘の支持力が失われた結果発生し、墳丘は下方に引きずり込まれるように崩壊したと推定される。その結果、墳頂部には約2mの大きな垂直変位が発生し、石室が破壊された。兵庫県南部地震においても、同様の変動メカニズムを持つ地すべりが発生し、一カ所で約70戸の家屋が被害を受けた事例がある。近畿圏に分布する古墳群は、規模と集積度の点で世界的にも貴重な文化財であり、同時に世界で最も地震活動の活発な地域に分布する最も大規模な土構造物(盛土)でもある。現代ではその多くが都市域に分布するため、こうした大規模土構造物の変形履歴、すなわちそれを崩壊させた地震動の推定や地すべりメカニズムの検討は、"現代都市の防災"上も重要な意義を有している。
|