Research Abstract |
地震発生時に震源近傍の観測地震動波形を利用して、震源から離れた地点(以下、地震動予測地点と呼ぶ)における主要動の時刻歴波形を,その到達前に推定する,「入力地震動波形のリアルタイム推定手法」を構築することを目的とする。 本年度は,波数積分法による理論地震動の水平方向伝達特性の分析に主眼を置き,半無限弾性地盤及び2層と3層成層地盤を想定し,単一の要素震源から始めて,M6クラスの垂直断層による横ずれと縦ずれ地震に対して,震源近傍に対する地震動予測地点の観測波形の周波数伝達特性を分析した。ラディエーションパターンの影響で,地震動振幅が極小値を示す伝播方向では,伝達特性にばらつきが生じるが,他の方向では,周期1秒程度以上のやや長周期地震動成分に着目すると,伝達特性は比較的安定していることが判明した。 地震動波形の直達S波を含む部分を抽出し,システム同定理論を適用した。各種同定理論の適用性を検討した結果,多入力多出力系への拡張が容易で,数値的に安定で計算精度も高い点から,部分空間法を選定して,伝達特性モデルの状態方程式を直接同定した。震源近傍50km地点の地震動波形を入力とし,そこから50km〜150km離れた地点の地震動波形を時々刻々に1/100秒程度の時間遅れで逐次推定するプログラムを作成し,波形推定精度を検証した結果,本手法が実現可能な事,4次程度の比較的低次のモデルで最大値・波形共に良い精度で推定できる事,が判明した。 様々な断層規模や破壊速度,破壊形式に対する伝達特性の変動やロバスト性,更に,実地震を想定した震源モデルに対する適用性は,今後更に検討を続ける予定である。 また,実際の観測記録での検討を次年度に実施するため,仙台地域を選定し,スペクトルインバージョンをベースにした伝達特性の同定も視野に入れて,拘束条件となる表層地盤の増幅特性を調べるため微動測定を行った。
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