2006 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀アメリカ思想史における「近代」と「宗教」の交錯をめぐる学融合的研究
Project/Area Number |
17651130
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古矢 旬 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (90091488)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平石 貴樹 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 教授 (10133323)
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Keywords | 宗教 / 近代化 / 大衆伝導 / スピリチュアリズム / 信仰復興 / 神秘主義 / 原理主義 / ピューリタニズム |
Research Abstract |
本年度は、これまでに蒐集した史資料に基づき、19世紀アメリカ合衆国の政治社会の近代化過程において、宗教がどのように関わっていたのかを学際的に解明することに努めた。具体的には、本年度の活動は、主として以下の2点にわたって展開された。(1)個人研究:19世紀アメリカの政治および文学と宗教をめぐる研究動向の把握と、それに関わる文献資料蒐集の継続-従来、近現代アメリカ政治史と文学(とりわけ個人作家のテクストの解読)とをそれぞれ専門としてきた両分担者にとって、19世紀アメリカ宗教史のすそ野は想像以上に広く、この課題を網羅的に達成することは、時間的にも資金的にも不可能であった。したがって、それぞれの専門を窓口として、その限られた視野と視角から宗教史の一端をかいま見る以上のことはできなかった。しかし、この個人研究をとおして、両分担者は、初期アメリカ政治の宗教的背景、19世紀アメリカ文学にみられる科学的自然観と神秘主義思想との関わりの態様、神秘思想や心霊現象への傾倒等々について、知見を深めることができた。 (2)研究会活動:19世紀アメリカの政治、文学、宗教と専門を異にする数名の専門研究者を招いての学際的研究会開催-これによって上記の個人研究の成果を共有するとともに、問題をより広い歴史的脈絡に据えることを目指した。その成果としては、禁酒運動、女性解放運動、反奴隷制運動等の世俗的な諸社会改革と宗教の関係、教会勢力の増減、移民と宗教、大衆伝道の拡がりと意義、信仰復興運動の活発化等に関して、基本的事実を確認するとともに、それらをめぐる新たな研究展開の可能性を探った。 以上から得られた萌芽的な知見により、近代化により社会が合理化され、非科学的な神話や信仰に立脚した宗教は衰退してゆくとする従来の近代化論は、19世紀アメリカに関する限り妥当しないことが確かめられた。
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Research Products
(6 results)