2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17652009
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
吉田 公平 東洋大学, 文学部, 教授 (70036979)
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Keywords | 陽明学 / 王陽明 / 中江藤樹 / 大塩平八郎 / 東敬治 / 『陽明学』 / 『王学雑誌』 / 『陽明主義』 |
Research Abstract |
王陽明を主唱者とする所謂陽明学は、江戸時代の初期に本格的に受容されたが、幕末維新期にこそ陽明学が革命思想として尊皇の志士を鼓舞したと一般に理解されてきた。しかし、実は陽明学運動が最も大きな運動量を発揮したのは、明治・大正・昭和初期であった。陽明学を基本理念とする民間の結社が機関誌『陽明学』(80号。鉄華書院)『王学雑誌』(31号。王学会)『陽明学』(196号。陽明学会)『陽明』『陽明主義』(148号。大阪陽明学会)を刊行した。この機関発行に関与した中心人物の活動歴、その活動の中で顕彰された陽明学者者たちの姿、この機関誌に投稿した人々の論調には、一般の商業雑誌や研究機関の成果発表誌に投稿されたものとは、著しい差異が見られる。一言で言えば、自らの生き方と天下に対する危機意識を基にした熱性がほとばしり出ていることである。近代思想史は進歩史観に立脚した研究が進められてきたために、陽明学・儒教に立脚したこの特色ある論調は顧みられることがなかった。儒教・陽明学が現代思想として活学されていた姿を確認する作業の手始めに、17年度は上記の機関誌の未収集分を補充し、全体の目録を作成することに精力を注いだ。この作業は18年度に完了したい。これまでに特に注目されなかった、村上作夫・河井継之助・鈴木無隠について報告論文を著した。また、各結社の機関車役を果たした人物の投稿実績を調べていく中で、これまでに閑却されていた人物像が明晰な形で浮かび上がって来たので、この点も18年度の研究課題にして報告論文にまとめていくことにする。彼らの論調を見ていくと、東京グループと大阪グループでは、顕著な差異が見られるので、それをも18年度・19年度に明らかにしたい。儒教・陽明学が果たした役割をあきらかにして、儒教・陽明学が過去の歴史的遺産にすぎないのか、或いは今日的意味が尚あるのかを検証することをこの研究課題の取り敢えずの最終目標とする。
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Research Products
(7 results)