2005 Fiscal Year Annual Research Report
「親日」・「親日文学」の内面心理と植民地の文化状況
Project/Area Number |
17652021
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
南 富鎭 静岡大学, 人文学部, 助教授 (30362180)
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Keywords | 親日 / 親日文学 / 植民地主義 / 朝鮮 / 文化 / 張赫宙 / 朝鮮人日本語文学 / 翻訳 |
Research Abstract |
本年度は、基本的な資料収集に勤めながら、「親日」「親日文学」をめぐる植民地の文化状況に関する以下のような研究成果を発表した。まず、「『キング』と朝鮮の作家」という論では、植民地期の朝鮮人作家による日本語創作の問題を明らかにした。植民地期の朝鮮人が日本語で創作するのは単に個々の思想と信念の問題ではなく、植民地期の大衆文化による日本語への欲望と深く関わっているということである。また「「呉鳳伝説」の朝鮮的な受容-植民地文化研究のための覚え書き」では、植民地主義がいかに戦後体制に引き継がれているかを、「呉鳳伝説」を一例にして示した。植民地支配が終焉しても旧植民地国家では帝国による植民地主義が戦後の自己の伝統として定着しているのである。それは新植民地主義として捉えられる。さらに、「<虎>と<妓生>の朝鮮表象-中島敦」では、中島敦を通して日本に表象される朝鮮の姿を明らかにした。<虎>と<妓生>による朝鮮表象である。そして、これらの研究実績に従来の論文を加え、『文学の植民地主義-近代朝鮮の風景と記憶』という単行本を刊行した。近代朝鮮がいかに植民地主義と関わっているかを様々な側面から考察したものである。 一方、本研究で具多的な一例としての考察を目指した張赫宙についての分析は、上記の論文(「『キング』と朝鮮の作家」)の中で取り上げた。そこでは、張赫宙の日本語創作がもつ歴史的、植民地文化的な状況を具体的に取り上げた。さらに、張赫宙の「春香伝」翻訳をめぐる問題を植民地の文化状況にあわせて考察した。
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