2005 Fiscal Year Annual Research Report
理論の歴史化と歴史主義の理論化-ポストモダニズム状況以降の文学観に向けて
Project/Area Number |
17652029
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
三浦 玲一 一橋大学, 大学院・言語社会研究科, 助教授 (70262920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越智 博美 一橋大学, 大学院・商学研究科, 教授 (90251727)
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Keywords | アメリカ文学 / アメリカ文化研究 / 文学理論 / 新歴史主義 / ニュー・アメリカニスト / 冷戦期 / ポストモダニズム / 南部知識人 |
Research Abstract |
三浦は、Walter Benn Michaels著The Shape of the Signifierの精読と翻訳の作業をした。そこで言及される、文学研究、国際政治、SF小説、美術批評等の原典にあたり、Michaelsの議論の当否を批評的に検討した。その結果判明したのは、ハートとネグリの『帝国』の議論以降のポストモダニズムの解釈からみるとき、昨今は冷戦期としてその特徴が検討されることの多い諸特徴は、ハイ・モダニズムからポストモダニズムへのゆるやかな移行として統一的に理解されるべきだということである。成果は、大塚英文学会、日本アメリカ学会年次大会にて発表される予定である。 越智は20世紀半ばにモダニズムの読みに決定的な役割を果たしていた新批評のジェンダー性と冷戦文化のロジックの関係性の検討を始めた。その前段階として、新批評の中軸をなした南部知識人の形成過程において、彼らの言説に入り込んでいたジェンダー性を検討し、その成果を「新批評の父たち」として発表した。また、新批評的な読み方が力を増していく時期と重なる戦後の文化政策について、占領期に日本に導入されたアメリカ文学から逆照射を試み、まだ試論的な段階ではあるが、その成果を"What Did She Read?"として発表した。また、こうした研究を行うにあたり、サラ・サリーによるジュディス・バトラー理論の入門書『ジュディス・バトラー』(青土社2006)の共訳者として参加できたことは意味深い。 この科研費は追加で承認されたため、いくつかの計画の変更を余儀なくされた。共同研究者のWalter Benn MichaelsおよびJennifer Ashtonとはe-mailでの議論を重ねた。また、幸便にも『現代批評理論のすべて』(大橋洋一編)への執筆依頼が、三浦・越智の双方にあったので、この研究の成果の一部をそこで発表した。
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Research Products
(3 results)