2005 Fiscal Year Annual Research Report
fMRIによる文のオンライン処理に関わる脳活動の研究
Project/Area Number |
17652039
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
生田 奈穂 東北大学, 大学院・国際文化研究科, COEフェロー (20374986)
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Keywords | 言語学 / 神経科学 / 脳・神経 |
Research Abstract |
本実験では日本語の基本語順文及びかき混ぜ文を主語、目的語、動詞の3部分に分け、一つずつ5.4秒に1回視覚刺激として呈示した。その結果、基本語順の文では主語で左側舌状回、目的語で左側下前頭回と左側補足運動野、他動詞で左側下側頭回が強く賦活化した。同様にかき混ぜ語順の文では目的語で左側舌状回と楔前部、主語で左側下前頭回、他動詞で左側被殻と右側中前頭回が賦活化した。両実験を比較すると、動詞が呈示されるまでは、賦活領域が類似しており、主語や目的語といった文法機能よりむしろ呈示される順番に依存して賦活領域が決定されていた。しかし動詞が呈示されたときに両文で全く異なる領域に賦活化が見られた。したがってHead-driven Parserの仮説を支持する結果となった。しかしかき混ぜ文の目的語の認知の際に、左側舌状回に加えて楔前部が賦活化しており、最初の名詞句に対する賦活化領域は両文で完全に同一ではなかった。また二番目の名詞句が呈示された際に統語処理に関わる左側下前頭回が賦活化しており、これはこの時点で文処理の一部がすでに始まっている可能性を示唆している。したがって、本実験の結果は脳内での文処理過程がincrementalとhead-drivenの両方の側面を持っている可能性を示唆している。理論言語学では両モデルの利点を備えた文処理モデルが提案されている(Mazuka,1998)。 以上の実験手法は自然な言語理解と完全に同一ではないため、さらに基本語順とかき混ぜ語順の文を聴覚刺激で文頭から文末まで続けて聞いた際の脳活動の計測を行いその結果を前述した実験結果と比較した。その結果、基本語順文で、左側下前頭回、かき混ぜ語順文で左側下前頭回と右側中前頭回に有意な賦活化がみられた。これは視覚刺激による実験で賦活化した領域と同一であり、本研究が刺激の呈示方法に依存しない結果であることが示唆された。
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