2006 Fiscal Year Annual Research Report
創設期イングランド銀行の口座利用者に関する史料分析的研究
Project/Area Number |
17652073
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
芝井 敬司 関西大学, 文学部, 教授 (00144311)
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Keywords | イングランド銀行 / 商人ネットワーク / 口座取引帳簿 / 西洋史 / 経済史 |
Research Abstract |
昨年度に引き続いて、イングランド銀行創設期と同時期の2種類のイギリス東インド会社の株主名簿に分析を加える作業を中心に研究を推進した。この株主名簿は、大英図書館のオリエンタル・アンド・インディア・オフィスに所蔵されている手書き文書類をマイクロフィルムの形態で入手したものである。文書の性格上、マイクロフィルムからの読み取りと分析の作業に時間がとられるが、着実に進めている。昨年度には、複数の株主名簿の間で、名簿の人名を確定する作業を行ったが、本年度は、人名の特定や履歴の調査のために購入した関連図書資料等を利用し、人物同定の作業を継続している。また、今年度は、東インド会社の取引記録を参照して、一部の有力な商人の取引記録から、取り扱い品目の傾向を析出する作業も行った。 以上の作業を通じて、現時点で明確になった点は以下の通りである。 1 創設期イングランド銀行の口座利用者と同時期のイギリス東インド会社の株主名簿搭載者には一定の重複があるが、大規模な外国商人の中には、いずれか一方にしか名前が現れない者もいること。 2 2つのリストに重複して名前の挙がる人物は、利用頻度や所有株式数からみて有力な商人グループを形成していると判断できること。 3 重複している人物について個人履歴をみると、半島出身のスファラディ系ユダヤ人をはじめとする相当数の外国出身商人がみられること。東インド会社の取引記録からすると、半島出身の外国商人は、実貿易よりも、金銀の地金取引、ダイアモンド、地中海産のサンゴなどの宝飾品取引を行っているケースが目立っていること。 4 東インド会社の株主名簿の場合には、家族や親戚で名簿に登載されている割合が高いということ。ただし、その理由が、口座取引と株主名簿との性格の違いから来るものか、金融機関と貿易会社という機関の性格からくるものかは、今後の検討による。
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