2006 Fiscal Year Annual Research Report
江戸期絵画資料に基づく体形と衣服デザインの定量的分析および相互作用に関する研究
Project/Area Number |
17652082
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
森下 あおい 滋賀県立大学, 人間文化学部, 助教授 (10230111)
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Keywords | 体形 / 衣服 / 着衣形態 / 浮世絵 / 絵画 |
Research Abstract |
本研究では,安土桃山時代から江戸時代,および明治時代までに描かれた浮世絵作品を資料として,描かれた女性の体形と着衣形態を時代推移から定量分析し,その解釈を行った.分析のための手法として絵画資料からの体形の推定と描出,描写比の算出法を考案した.この手法は人類学に基づいた体形の把握や,比較分析に必要な人体各部位の項目が算出可能である. 浮世絵に描かれた女性像の体形は,1600年から1750年の期間では太い胴部の幅径と短い四肢の体形,1750年から1850年の期間では小さな頭部で細身の体形と大きな頭部の大柄な体形の双方が見出された.さらに1850年から1900年の期間は小さな頭部に広い肩幅で胸部の広い体形が描かれていた.これらの結果から,全期間を通じて浮世絵における女性の体形は,くびれが少ないずん胴で胴長の共通した体形特徴を保持していたとともに,各期間固有の体形が顕著に表されていたことが判明した.また時代推移の分析から,人体の各部位間において全頭高と幅径項目で極めて強い正の相関があることが明らかになった.一方,浮世絵に描かれた小袖の着衣形態は,帯幅がその他の部位の位置に強く関係し,帯幅の推移は帯上端の変化が大きく,下端は大半の時期で一定であった.さらに小袖着衣形態のプロポーションと体形の時代推移から,帯の下端は人体の股下の位置に,襟あきの位置は胸部下部の位置に対応する傾向が顕著であった.これらの結果から,相互に関係し合う小袖の着衣形態と人体部位の位置,および範囲が明らかになった. このように本研究における江戸期約300年に渡る浮世絵の体形分析から,これまで定性的に語られてきた絵画上の体形特徴と着衣形態が定量的に明らかになった.この手法を今後広い分野の絵画資料に活用することで,種々の体形や衣服の形態に関する意味ある情報が解明されると考える.
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