2005 Fiscal Year Annual Research Report
少子高齢化社会における資産課税の問題に関する研究-不動産の有効活用を中心として
Project/Area Number |
17653005
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
柴 由花 明海大学, 不動産学部, 講師 (20383193)
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Keywords | 資産課税 / 少子高齢化 / 相続税 / 不動産 / 遺産税 |
Research Abstract |
今年度は、資産課税の中でも、とりわけ資産の移転課税について研究を行った。資産の移転課税に関し、わが国では、少子高齢化社会における財源調達のために相続税を重課すべきとの論調が強く、富の再分配という課税根拠が保持されている。しかしながら、世界的に相続税は廃止される傾向にあることから、今年度は、米国とスウェーデンにおける遺産税・相続税の廃止に焦点を当て、重点的に研究を行った。 まず、連邦遺産税の廃止法案が成立している米国では、租税による再分配に対する反発と支出税であるフラット・タックスへの支持がある。しかしながら、連邦遺産税が廃止されれば、富の集中が進むことが懸念されるため、連邦遺産税廃止後の税制改正について、現行の連邦遺産税の改正(基礎控除の引上げ)や遺産取得型の相続税の導入のほか、包括的所得概念に従い、相続や贈与による資産の取得に所得課税を行う方法が検討されている。 他方、2004年に相続税・贈与税が廃止されたスウェーデンでは、1991年の税制改革以降、不動産にかかる税負担(相続税・贈与税、不動産税、富裕税)の増加、中小企業の事業承継、国際的租税回避、執行費用の増加といった問題があることが判明した。 以上から、単に少子高齢化社会の財源調達、富の再分配という理由で、相続税に依存することには、限界があると考えられる。世界的に遺産税・相続税が廃止される中で、わが国が相続税を重課すれば、資産が国外へ逃避することも想定される。相続税の廃止、軽減がなされる方向にあれば、確かに不動産の有効活用には望ましい面がある反面、資産課税については移転課税から保有課税にシフトすることが想定される。その結果、不動産の保有、とりわけ低所得層や高齢者といった資産の保有者には税負担が高まるであろう。したがって、次年度は、資産の保有課税の問題を中心として研究を進めていく。
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