2006 Fiscal Year Annual Research Report
少子高齢化社会における資産課税の問題に関する研究-不動産の有効活用を中心として
Project/Area Number |
17653005
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
柴 由花 明海大学, 不動産学部, 講師 (20383193)
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Keywords | 資産課税 / 少子高齢化 / 相続税 / 不動産 / 遺産税 |
Research Abstract |
今年度は、資産課税の中でも、とりわけ資産保有課税について研究を行った。わが国では、北欧の二元的所得税をモデルとした金融所得課税の一体化が検討されているが、税制調査会金融小委員会は「資産の中でも、土地等については、帰属地代・家賃に課税できないという問題のほか、我が国では公共性のある資産という土地基本法上の位置付けを踏まえて特別の税制上の取扱いがなされており、税制上、金融商品とは異なる面もある」として(『金融所得課税の一体化についての基本的考え方』(2006年6月15日))、資本所得と資産保有課税との関係は顧慮されていない。 他方、スウェーデンの不動産税について、所得税との関係の観点から考察したところ、不動産税が資本所得課税の代替機能を有し、住宅ローンにかかる利子控除に正当性が与えられていた。また、近年、不動産の高騰によって評価額が上昇したことから、不動産税への批判が高まり、2008年から不動産税については廃止されることになった。もっとも、二元的所得税の下では、譲渡所得税に対して課税を軽減することから、所得税の補完税として、相対的に資産保有税が強化される可能性が指摘されていた。また、EUの域内統合(スウェーデンは1995年にEUに加盟)の中で、移動不可能な課税ベースへのシフトという租税政策の可能性も指摘されていた。スウェーデンの不動産税の廃止は、こうした租税政策の限界を示すようにも思われる。 しかしながら、不動産保有税を所得税と関連付けて考える方策は、わが国のようにもっぱら不動産保有税を物税として捉える見方に、新たな視点を与えるように思われる。居住用不動産に関する不動産保有税を所得税の代替と見ることで、住宅ローンの利子控除や所得の低い高齢者等の不動産保有者への人的控除の設定が可能になる。さらに、金融所得課税の一体化において、不動産は金融所得課税から除外されているが、不動産保有税と所得税とを関連付ける方策は、不動産所得の改廃を含んだ所得区分の見直しの可能性を含む。
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