2005 Fiscal Year Annual Research Report
危険運転致死傷罪の実証的点検-刑事立法の合理性評価方法の定立に向けて-
Project/Area Number |
17653008
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岡本 勝 東北大学, 大学院・法学研究科, 教授 (50004164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤宗 和香 東北大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20374879)
成瀬 幸典 東北大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (20241507)
佐藤 隆之 東北大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (30242069)
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Keywords | 刑事法学 / 交通犯罪 / 危険運転致死傷罪 |
Research Abstract |
本研究は、危険運転致死傷罪に対して指摘される様々な問題のうち、主として、(1)重罰化によって被害者は慰謝されるか、(2)重罰化によって交通事故を抑止することができるか、(3)故意犯として構成される同罪規定は構成要件として明確といえるか、(4)運用に際し、処罰範囲の拡大、不明確化を招いていないか、(5)立法経緯や現実の被害者感情が、量刑実務上、(業務上過失致死傷など)他の犯罪との関係で不均衡な形での厳罰化をもたらさないか、という点をとりあげ、立法時に予想された問題が、その運用上、はたして、また、いかなる形で生じているか、実証的に点検することを通じて、刑事立法の合理性の評価方法を探ることを目的とするものである。 今年度は、研究代表者および研究分担者の主たる研究対象たる法領域について、文献調査を中心に情報収集を行うとともに、国内各地の研究者、実務経験者との意見交換の機会を複数回設けた。さらに、研究代表者および研究分担者の参加する大学内部で研究会を開催して、近時の裁判例を素材として議論を重ねた結果、下級審裁判例は、立法時の議論に忠実に、同罪の構成要件を厳格に解釈する傾向が強く、同罪で捕捉できない悪質な交通事犯にいかに対処するかという新たな問題が生じていることも明らかとなった。次年度は、この点も含めて、危険運転致死傷罪の新設に対する総合的な評価を行う予定である。 なお、研究初年度である今年度は、基礎的な資料収集および課題の抽出・共有作業を中心に行ったため、公刊された研究成果はまだない。
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