2006 Fiscal Year Annual Research Report
国際連盟における中国外交と日中関係-中国外交档案による「リットン史観」の克服-
Project/Area Number |
17653017
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川島 真 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (90301861)
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Keywords | 国際連盟 / リットン調査団 / 非常任理事国 / 経費分担 / アジア枠 / ライヒマン / 連盟脱退 / 国際的地位の向上 |
Research Abstract |
本研究は、国際連盟における日中関係について研究し、そこから従来の日中関係史研究には見られなかった側面を浮かび上がらせるとともに、直接的な二国間関係に基づくものではない、国際機関を通じての東アジアにおける秩序形成のあり方を追求しようとするものである。今年度は、初年度の成果を報告、公刊しつつ、リットン調査団に関する史料を読み進めた。まず、中国の国際連盟外交を「国際的地位」という中国近代外交の主要政策目標から捉えなおした「中国外交における象徴としての国際的地位」(『国際政治』<特集・天安門事件後の中国>145号、2006年夏、17-35頁)を刊行した。ここでは、1920年代の中国が国際的地位の向上を企図して国際連盟の原加盟国になり、理事会の非常任理事国ポストを獲得すべく、選挙の際にアジア枠を設けるよう要求し、他方で経費面では常任理事国波の経費を負担しようとしたことを明らかにした。また、非常任理事国のポストがあったからこそ、満洲事変を理事会に訴えることが容易になったことは言うまでもない。「中華民国の国際連盟外交-『非常任理事国』層から見た連盟論」(緒方貞子・半澤朝彦編著『グローバル・ガヴァナンスの歴史的変容-国連と国際政治史-』、ミネルヴァ書房、2007年、49-74頁)は、先の論考を基礎としつつ、1930年代初頭の中国が国際連盟からの近代化支援(経済援助、衛生建設、アヘン撲滅など)を受け、連盟の社会事業の主要な場となっていたこと、連盟との緊密な関係が日本の孤立化につながったこと、この緊密な関係が1940年代における国際連合組織過程における中国の発言権確保に結びついたことなどを明らかにした。こうした検討を背景にして、本科研の主題である国際連盟における日中関係というテーマに踏み込んだ報告として、"Sino-Japanese Relations at the League of Nations"(Session2: Japan and China at the LN/UN, Japan and the UN in International Politics : Historical Perspectives,2006年12月10日、明治学院大学)がある。それは、Sino-Japanese Relationship Relationship at the League of Nations, Asahiko Hanzawa ed., Japan and the UN in International Politics : Historical Perspectives, Academia Juris Booklet, No.24.2006.pp.92-126.として公刊された。ここでは、1920年代に中国が理事会の常任理事国になろうとした際に日本がとった態度を含め、国際連盟における日中関係というテーマにおける論点を提示している。次年度は、これらの論点を踏まえながら、日本側の文書やリットン報告書を含めて読み込んでいきたい。
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