2006 Fiscal Year Annual Research Report
「市場」と「経済人」の神学的起源:18世紀イングランド神学とスコットランド啓蒙
Project/Area Number |
17653020
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
有江 大介 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究科, 教授 (40175980)
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Keywords | バトラー / イギリス国教会 / 欺瞞理論 / 蓋然性 / ヒューム / J.S.ミル / 市場 / 経済人 |
Research Abstract |
平成18年度(第2年度)は、主として、バトラーらイギリス国教会主流である牧師たちの教説と、国教会の対極にあると思われるヒュームからJ.S.ミルに至る功利主義者たちの言説との関連について主として検討したご具体的には、第一に、バトラーの欺瞞的自由論に基づく自由意志論、蓋然的・利己的人間観、個人の意志を越えた良心に制御される調整メカニズムなどの、市場経済に適合的な人間類型を彼が説教の中で展開していたことを抽出した。第二に、それらが、スコットランド啓蒙における、ケイムズ(自然神学と欺瞞理論)、ヒユーム(帰納法批判と功利主義)、スミス(市場と"見えない手")などの人間・社会・宗教把握の先駆となる内容を持っていることを示した。第三に、そうした自己の欲求と世俗性に定位した人間把握と彼らを善導すべき教会との関連が、啓示に基づく信仰というより個人と社会にとっての利益という観点から考察されていること、それがイングランドのペイリー、ベンサム、J.S.ミルにつながる功利主義的宗教論にも共通する要素を持っていることを明らかにした。 以上の三つの検討課題のうち、第三点にかかわって、‘J.S.Mill's Rehgious Thought and the Benthamite Tradition of the Critique of Rehgion'と題する報告を、J.S.Mill Bicentennial Confbrence(ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン:2006年4月)にて行った。また、上記ミル宗教論ついての紀要論文、イギリスにおける貨幣の思想と哲学に関する辞書項目(イギリス哲学会編『イギリス哲学事典』2007年刊行予定)を執筆した。なお、2006年4月、9月、2007年3月にエディンバラ大学、ヨーク大学、ブリティッシュ・ライブラリー等でバトラー等日本国内では見ることのできない文献・資料の調査と閲覧を行った。
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