2005 Fiscal Year Annual Research Report
制度・政策の影響評価のためのマルチエージェント・シミュレーションモデルの開発
Project/Area Number |
17653025
|
Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
江頭 進 小樽商科大学, 商学部, 助教授 (80292077)
|
Keywords | エージェントベースモデル / 政策評価シミュレーション / 強化学習 / 会計基準 / 情報化社会 |
Research Abstract |
平成17年度は,制度評価モデルの基本的な部品を作成するために,内部構造をもつコンピュータ・エージェントの開発をおこなった。特に北陸先端研大学の橋本敬氏と共同で,SIC-SRN型ニューラルネットワークを備えたエージェントモデルを作成し,マイノリティゲームとマジョリティゲームのそれぞれにおける振る舞いを観察した。この種の強化学習型のエージェントモデルは,マジョリティゲームでは比較的簡単に収束してしまうが,マイノリテイゲームの場合,エージェントの採る手のパターンやそこから生み出されるマクロ構造はきわめて複雑であり,状況に応じて遍歴ダイナミクスが観察される。マイノリティゲームは,通常制度モデルとして考えられているマジョリティゲームと比べても,より現実の市場競争を再現していると考えられる。その中で,一定のマクロ構造が観察されたことは新しい発見であると言えるだろう。 また,京都大学の澤邉紀生氏,北陸先端研大学の橋本敬氏との共同で,会計基準の細目主義が,結果的に情報処理の集中を生み出し,企業側に粉飾決算などの虚偽報告をさせる制度的問題があることを証明すべく,シミュレーションモデルの開発を開始した。これは江頭が2001年に発表した「嘘つきゲーム」の拡張であり,情報の「複雑さ」と解釈の問題をより,会計基準の細目主義と合致させたものである。高度情報化社会における専門機関による認証が,一般的になりつつあるや最近の粉飾決算の多発や建築偽装などの問題は,すべてこのモデルによって解明ができると考えられる。ディスクロージャーや検査機関の整備が最近の基本的な方向だが,本研究では,そのような法制度が有効に機能するかどうかを事前に評価するための基礎モデルを開発することを目標としている。
|