2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17653035
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Research Institution | Saitama Gakuen University |
Principal Investigator |
村田 和博 Saitama Gakuen University, 経営学科, 准教授 (00300567)
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Keywords | イギリス / 経営学説 / J.S.ミル / C.バベッジ / J.モントゴメリー / A.ユア |
Research Abstract |
19世紀前半期イギリスの代表的な企業分析家であるJ.モントゴメリー(James Montgomery)、C.バベッジ(Charles Babbage)、A.ユア(Andrew Ure)、およびJ.S.ミル(John Stuart Mill)の経営学説を丹念に検討した結果、19世紀前半期イギリスにおける経営学説の特質として、以下の結論を得るに至った。 第一に、企業が激しい市場競争にさらされているという認識が共通して存在していることである。モントゴメリーは、イギリスとアメリカ両国の技術力、賃金、製造コストなどの比較検討を通じて、アメリカ綿製造業に対するイギリス綿製造業のコスト上の優位性が認められないと主張した。ユアはアメリカ製造業の台頭に危機感を持ち、労働時間の削減といった労働者階級からの要求をコストの増加を導くものとして退け、コストの増加は結果として失業や賃金低下を招くから、労働者階級の要求内容は労働者階級にとってむしろ利益とはならないことを力説した。また、バベッジとミルは市場競争を企業の変革を引き起こす契機になると理解している。 第二に、機械と大規模生産に対する関心が高いことがある。モントゴメリーは、機械の設置、配置、調整を管理者の職務として規定し、彼らに機械の調整方法やコストの計算方法を修得するよう求めた。生産の大規模化に関しては組織との関係が多面的に検討され、バベッジは工場の大規模化が分業を促進すると、ユアは工場の機械化が分業の廃止を促すと、さらに、ミルは企業の大規模化が分業または協働を促進する、と指摘していた。 最後に、彼らが法躍した時期にはラダイト運動に象徴されるような激しい労働運動が発生していただけに、労使開係に対する関心が高いことがある。労使の対立は、どうすれば解消できるのか。モントゴメリーは、労働者に対する公平処遇といった管理者の管理方法や資質に解決策を求めた。バベッジとユアは、労働者と雇主側の利益は本来対立するものではなく一致することを力説し、とりわけバベッジは、F.W.テイラーの科学的管理法に類似した経営管理法を提示することで労使協調の実現をねらっていた。ミルは労働者と資本家という二つの階級に分裂している限り、労使の対立を解消することは難しく、労働者階級は経済的・知的自立を求めてアソシエーションを結成すると見ていた。
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Research Products
(3 results)