2005 Fiscal Year Annual Research Report
経営理念とマネジメントプロセスと企業パフォーマンスの因果関係モデルの研究
Project/Area Number |
17653036
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
渡邉 光一 関東学院大学, 経済学部, 教授 (30329205)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 正大 慶應義塾大学, 大学院・経営管理研究科, 助教授 (70327667)
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Keywords | 経営理念 / 因果関係モデル / 共分散構造分析 / 企業業績 / 実証研究 / マネジメントプロセス / 理念の浸透 / 行動と言説 |
Research Abstract |
経営理念は、具体的なマネジメントプロセスへ繋がってはじめて成果に結びつく。経営理念の共有策の効果や理念浸透プロセスの客観的な測定方法の確立が不可欠となる。そこで、社会人大学院生(平均勤続年数約8年)に、所属企業について質問調査を行ない、経営理念の共有策、理念浸透の主観的な認識度を尋ねた。企業業績としては、「トービンのq」を用いた。それらを分析した結果、(1)共有策と企業業績の間には有意な関係が存在する、(2)共有策と浸透認識度の間にも有意な関係が存在する、しかし、(3)浸透認識度と企業業績には統計的に有意な関係は見出せない、という3点が明らかとなった。(1)は、経営理念の共有のための経営施策に、企業業績を向上させる効果があることを示している。興味深いのは、共有策のうち、「イベント・キャンペーン」、「理念の具体的行動ルールへの翻訳」という2つの施策は企業業績に正の効果を与えるが、社長以外の英雄を象徴として告知、知識重視の研修という2つは負の効果を与えることだ。(2)は、経営理念共有のための施策に、理念浸透に関する主観的認識度を向上させる効果があることを示す。ここでは、「飲み会での対話」、「社長の挨拶による経営理念の強調」、「理念を具体的な行動ルールに翻訳するための努力」は、理念浸透の主観的認識度を高める。しかし「業務体験交流会」は浸透度を低くする結果となった。具体的な業務にフォーカスしすぎると、原点としての理念が見失われるのかも知れない。以上の結果は、行動ベースの共有策と言説ベースの共有策の効果の違いを示唆している。意外だったのは、(3)の理念の浸透認識度が高まっても、企業業績は高まらないという結果である。我々は、この結果は(1)(2)とあわせて、従来の理念研究の限界を示すとともに、よりビジネス的価値の高い経営理念共有度を考えるためのブレークスルーを導き出すきっかけになるのではないか、と考えている。
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Research Products
(1 results)