Research Abstract |
日本では,医学教育および看護教育において,問題基盤型学習(Problem-based learning,以下PBL)が1990年代より,医師および看護師の問題解決技能,臨床推論能力および批判的思考のスキル,コミュニケーション能力,自律的学習態度の育成を目的に,基礎科目や実習科目において導入され,その成果が報告されてきている。ソーシャルワーカーの国家資格である社会福祉士および精神保健福祉士の養成過程においては,PBLの本格的導入は日本では行われていない。本研究の前半では,PBLの理論と実践および成果についての文献研究を行い,精神保健福祉士養成過程にPBLを導入する意義や期待される効果について検討を行った。 後半では,精神保健福祉士養成過程にPBLを導入する際の課題を明らかにすることに取り組んだ。日本武蔵野短期大学で実践について,資料収集,訪問調査を行った。カリキュラムの構成,学習内容の構築,プログラムとして用いられるシナリオの作成,チューター養成,学習環境の整備などが,課題となってきている。 また,さらにソーシャルワーカー養成過程でどのようにカリキュラム構成,学習内容の構築等が行われているのかを理解するために,オーストラリアのニューキャッスル大学人間科学部ソーシャルワークコースに注目し,文献,訪問調査等により資料収集を行った。PBLは,ソーシャルワーカー養成教育においては,Enquiry and Action learning, Enquiry/Inquiry based learning Problem centered learning等の別称を用いられている場合もある(The Higher Education Academy, http://www.swap.ac.uk/learning/PBlearning3.asp)。オーストラリアのニューキャッスル大学では,1992年よりPBLを用い教育を行ってきた医学部の支援のもと,人間科学部ソーシャルワークコースでPBLを援用したexperienced-based learningをソーシャルワーカー養成過程に導入し,発展させてきている。このモデルでは,理論と実践を統合し,共働的な小グループによるアプローチを用い,これらを社会正義の文脈とストレングスの枠組みに位置づけている。 今後は,このニューキャッスル大学での取り組みをモデルとして,4年制大学の精神保健福祉士養成過程でどのようにPBLを導入していくことが可能であると考えられるかをまとめ,報告を行っていきたい。
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