2005 Fiscal Year Annual Research Report
「集団内地位モジュール」の進化・生態学的基盤に関する予備的検討
Project/Area Number |
17653064
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
亀田 達也 北海道大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20214554)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 晃 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助手 (30312325)
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Keywords | 地位 / モジュール / 適応 / 進化 / 社会制御 / 秩序 / 進化ゲーム |
Research Abstract |
本研究は人間の社会性の理解にとって極めて重要でありながら、これまで体系的に検討されることの少なかった「人間の集団内地位(status)行動」に進化・生態学的観点から接近を試みるものである。近年の霊長類学や行動生態学の知見が示すように、霊長類は、地位構造を含む集団内の社会関係を巧みに利用しながら集団生活への適応を実現している。例えばマキャヴェリ的知性に関する研究は、チンパンジーのオスが社会的序列を利用した複雑な同盟関係を結び、メスもまたそうした序列を背景に採餌・子育て戦略を形成することを明らかにしている。同時に「推移律」の理解などの認知能力も、社会的な序列関係の理解を基盤に行われる可能性が指摘されている。こうした最近の知見は、霊長類が"地位モジュール"とでも呼ぶべき領域特殊的な認知機能を獲得していることを示唆する。本研究では、こうしたモジュール的機能が、群居性の動物であり、かつ、極めて高度の社会性を有する人間においてどのように働くのか、一連の心理学実験と進化ゲームによるモデル化を通じて探索的な検討を試みる。 上述の目的に向けて、本年度は、(1)理論モデルの構築、(2)予備的な調査、の2つを行った。理論面では、社会制御のためのシステムとして、地位序列を基盤とした「官僚型」のシステム、内外集団の区別を基本的に重視しない(従って地位序列も重視しない)「企業家型」のシステムの2つが持続可能な進化的安定均衡として存在する可能性を、進化ゲームモデルの観点から検討した。この検討から得られたインプリケーションは、「これらの社会制御システムは、それぞれ異なる感情・行動を要請する適応的な心的モジュールとして、個人に実装されている」という命題である。この命題を検討するために、7つの大学に所属する大学生を対象とする予備的な調査を行った。この調査から、モデルの予測どおり、2つの異なる社会制御システムに対応する、心的なモジュールが実際に存在することを示唆する結果が得られた。次年度は、この知見を、実験により精緻に確証する予定である。
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Research Products
(1 results)