2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17653089
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中溝 幸夫 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (60036978)
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Keywords | 眼球運動 / バージョン / バーゼンス / ヘリング法則 / 等神経支配法則 / 単眼パーシュート運動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、両眼の運動を制御しているシステムが1つであるか、それとも2つであるかという問題を理論的、実験的に検討することである。E.Hering (1868)の等神経支配法則は前者の立場をとり、H.von Helmholtz (1906)の仮説は後者の立場をとる。実験1では、単眼パーシュート条件(片眼の刺激は静止、他眼の刺激がさまざまな速度で等速運動する条件)において、運動刺激の速度の関数として両眼の感覚融合が保持できる割合を心理物理学的に測定し、感覚融合閾を調べた。その結果、刺激運動方向が水平と垂直の場合で、融合がブレークする刺激速度閾は異なっており、水平方向では4°-5°の範囲、垂直方向では0.5°-1°の範囲であった。 実験2では、単眼パーシュート条件および両眼の刺激の運動速度がそれぞれ異なる条件における眼球運動をリンバストラッカー法で記録した。その結果、単眼パーシュート条件では垂直・水平の方向如何にかかわらず、実験1で述べた閾値よりも遅い速度条件においては単眼しか動かないこと、さらに両眼運動速度が異なる条件では両眼の運動方向が同じ(バージョン)であるか、異なるか(バーゼンス)にかかわらずパーシュート運動が可能であることがわかった。 これらの結果から、刺激イメージの両眼融合による単一視(single vision)を保持できる刺激の運動速度範囲では、両眼運動は独立に制御されていること、つまりHelmholtzの仮説に一致する運動が生じること、一方、両眼融合をブレークして両眼注視を空間内で変化させるときはHeringの仮説に一致する運動が生じることが従来の研究から示されてきた。これらの実験結果は、両眼運動が1つのシステムで制御される条件と2つのシステムで独立に制御される条件がありうることを意味し、われわれの見解の妥当性を示すものである。
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