2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17653093
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
水本 徳明 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 助教授 (90239260)
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Keywords | 教育学 / 職員室 / 場 / 学校組織 / 学校経営 |
Research Abstract |
学校組織における「場」として職員室を捉え、その観点から理論研究と学校の事例研究(教員へのインタビュー)を実施した。 理論研究においては、組織を「複雑反応過程」(complex responsive process)として捉えるイギリスのStaceyらの理論から、学校の組織・経営について検討した。「複雑反応過程」論は、複雑適応系の理論をアナロジーとして組織に適用する反面、ミードの自我論に依拠して相互行為を通じたアイデンティティの形成、更新を捉えている。「複雑反応過程」論では、組織における相互行為から秩序と個人が同時的に創発するものと捉えられている。個人の創発はいわば学習であり、学習を目的とする学校組織にはきわめて適合的な理論であることが明らかとなった。また、経営の成功のためには「関係性の質」、「十分豊かに結び付けられた人間の相互行為」が関わっていることが指摘されており、「場」としての職員室における教職員のコミュニケーションの在り方が学校経営にとってきわめて重要であることが示されている。 事例研究を通じては、例えば(1)少人数指導に熱心に取り組んでいる学校においては職員室において授業の工夫などに関するコミュニケーションが比較的活発である、(2)学校によっては職員室の条件整備が十分でなく、情報の整理がなされにくい環境にある、などの状況が捉えられたが、一般化するにはまだデータの収集が十分ではない。 このほか、前年度に引き続く歴史研究として、明治期の学校建築についての調査も行った。また、計画では職員室の実態についての質問紙調査を実施する予定であったが、いじめを理由とする児童生徒の自殺についての報道などにより学校内部のコミュニケーションが通常とは異なる状況になることが懸念されるとともに、調査に対して教職員がより敏感になることが予想されたために実施しなかった。教職員対象の質問紙調査は平成19年度に実施する予定である。
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Research Products
(1 results)