Research Abstract |
本研究の目的は,学校における音楽授業において,日本音楽の伝統的な特性を生かした義務教育9年間にわたるカリキュラムを開発することにある。本年度の実践概要は以下の通りである。 1.これまでなされてきた音楽学の研究を基に,日本伝統音楽の音楽特性について理論的に捉えた。リズム・旋律(音律)・音色・合奏様式等の側面からその全体把握の枠組みを提示した。 2.音楽特性を音楽授業のカリキュラムに援用する枠組みと構成原理を示した。明らかにされた音楽特性を学校の音楽授業において実践するために,現行の学習指導要領の指導事項に照らし合わせて対応させ,以下の事項として指導内容として位置づけた。 <構成要素・表現要素> ・言語的な特性(発語の工夫,言葉のリズムや抑揚) ・音色の特性(多彩な音色,発音の工夫,個性的な音色の集合体) ・時間的な特性(拍節的なリズムと自由リズム,速度の漸次的変化,リズム型,拍子,拍,拍の伸縮,間など) ・旋律的な特性(単旋律志向,多彩な旋律装飾,音組織,旋律型,相対的な音階など) ・構成(段,序破急,物語・祭礼・式典等に従った構成) ・特性のさまざまな組み合わせ(不即不離の合奏(唱)様式,空間的な音楽配置など) <文化歴史,他の芸術との関連> ・文化的側面(物語・美術的要素・身体的要素,自然・歴史,信仰・祭礼・生活,共同体,感性・美意識など) <自然音,環境音> ・自然の音,生活の音,意図的な生活音,描写音・象徴音 3.これらの研究の一方,日本語を話す日本の子供が持つ音楽的感性や音楽的・身体的行動,日本人の音楽創造・音楽把握の在りようについて考察するとともに,日本伝統音楽のとらえ方について,再検討を行った。その結果,伝統音楽を生み出す身体を基盤とし,動き・息,ことば・ふし,音色といった視点からのカリキュラム構成を提案した。 4.これらを受けて,新潟大学附属小・中学校における授業を実施した。
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