2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17654043
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永原 裕子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (80172550)
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Keywords | 核形成 / ダスト / 凝縮実験 / 気相成長 / 表面張力 / 真空 / 星周 |
Research Abstract |
本研究では,宇宙における固体物質の形成・進化の鍵を握るダストの形成に関し,気相からの核形成,粒子成長過程の速度論的係数を実験的に決定することを目的とした.凝縮係数が進化のタイムスケールと線形の関係にあるため,それが一桁異なると,進化のタイムスケールが1桁異なる事になり,恒星進化にとって決定的な役割を果たす.初年度は,気相中と固相中の分子種が単純で等しい鉄をターゲットとして研究を進め,平衡に比較的近い条件では係数は1よりやや小さくなり,非平衡の程度の大きい条件下では1となるという結果を得た.前年度の研究を詳細に検討した結果,実験装置内におけるガスフラックスの見積もりに誤りがあることが判明し,その原因となったガス導入管の改善をおこなった.数種にわたる改善を重ねた結果,最終的に最適のものの作成にいたった.それを用いて,再度鉄の凝縮実験をおこない,一定温度のものと,過飽和比をコントロールした実験をおこなった.その結果,過飽和比が10以上の条件において凝縮係数は1となることを明らかとした.この結果は,世界で初めて実験的に凝縮係数を決定することに成功したものである.また,実験の副産物として,鉄がアルミナ基盤上に容易に核形成することが明らかとなった.従来は表面張力の大きさのため,鉄は酸化物上では核形成不可能と考えられることが多かったが,酸化物表面のミクロスケールのラフネスを考慮にいれていない誤った議論であることが明らかとなった.これらの結果は,宇宙における固体形成の描像に大きな変化をもたらすこととなった.鉄よりさきに珪酸塩鉱物などが凝縮していれば,鉄は容易に凝縮することとなる.ガスの圧力と冷却時間の関係における固体粒子の形成過程をモデル化した.これらの結果は39th Lunar Planetary Science Conferenceにおいて発表し,現在論文を失費地中である.
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