2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17654044
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井上 邦雄 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10242166)
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Keywords | 地球ニュートリノ / ニュートリノ地球物理 / 地熱 / 地球内部 / 地球組成 / 地球構造 / 放射性 |
Research Abstract |
原子炉ニュートリノの振動パターンをはっきりと捕らえたことにより、ニュートリノ振動パラメータの精密測定に成功した。これにより、ニュートリノを地球内部観測のための新しい手段として利用することが可能になった。カムランドにおける地球ニュートリノ観測では、原子炉ニュートリノが最大のバックグラウンドとなるが、放射性不純物のα崩壊による^<13>C(α,n)^<16>Oからのバックグラウンドも大きく、α崩壊数の同定、反応断面積の評価、中性子反応に対する液体シンチレータのクエンチング効果の評価が重要となる。ニュートリノ振動パラメータの精密測定は、原子炉ニュートリノバックグラウンドの高精度評価につながり、747.1日分のデータを使った解析では、バックグラウンド評価数127±13に対し、152事象が観測され、約25事象の地球ニュートリノによる有意な超過が得られた。これは世界初の地球内部放射性物質由来のニュートリノ観測の成功であり、新しい研究分野「ニュートリノ地球物理」の開拓である。さらに、標準的な地球形成・進化モデルと比較するために、ウラン・トリウムの詳細な分布情報を収集評価し、神岡周辺の岩石分析も行うことで、世界で最も緻密な放射性物質分布の観点からの地球モデルを作成した。このモデルからの地球ニュートリノ事象数の予測は19事象で、観測結果はこれと矛盾しない。ニュートリノデータを使ってモデルを検証し新しい知見を引き出すためには、さらなる測定精度の向上が不可欠であるが、本研究ではバックグランド除去に向けての純化装置開発にも成功し、既に取得したデータのバックグラウンドに対しても、解析手法改良によるα崩壊数の精密測定・中性子ビームを使ったクエンチング効果の精密測定を実現した。さらに本研究をきっかけとした^<13>C(α,n)^<16>O反応断面積の再測定も行われ、分野全体が活発になると共に、将来の精度向上に向けての先鞭をつけた。
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