2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17654060
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
島田 賢也 広島大学, 放射光科学研究センター, 助教授 (10284225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根岸 彩子 広島大学, 放射光科学研究センター, 研究機関研究員 (00403618)
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Keywords | TiSe_2 / Fe_xTiSe_2 / インターカレーション / 超格子形成 / 角度分解光電子分光 / バンド構造 / フェルミ面 / 遷移金属表面 |
Research Abstract |
本年度は山形大学との共同研究により層状半導体TiSe_2にFeをインターカレートしたFe_xTiSe_2の超格子消失のメカニズムに関して研究を進めた。TiSe_2は転移温度T_c〜200K以下で2a×2a×2cの超格子を形成し、電気抵抗率に異常が見られる。われわれは角度分解光電子分光実験により超格子形成にともなうバンドの折り畳みを観測した。Fe濃度xを増やしていくとT_cが減少するが、x〜0.07で電気抵抗率の異常が完全に消失する。これはFe3d軌道との混成相互作用により、超格子の変形が抑制されるためと考えられた。そこで√<7a>×√<7a>の三角格子に浸透理論を適用し、超格子消失の臨界濃度をx_c=1/14〜0.0714と計算した。本年度は鉄の濃度を細かく調整して、臨界濃度が実験的にも0.065と0.075の間にあることを検証した。x<x_cの領域では、電気抵抗率の絶対値が高く、局所的な格子歪みによるポーラロンが形成されるためと解釈された。x>x_cの領域では、電気抵抗率の温度依存性は金属的であるが、70-80Kに異常が観測された。一方、磁化測定ではその温度領域に長距離磁気秩序は出現しないことが判明した。われわれはx>x_cの領域の電気抵抗率の異常の起源を考察し、これは部分的に残存する面内の格子歪みによるものと議論した。これまでに得られた考察をふまえ、TiSe_2の超格子形成に関して、面内の格子歪みにより電荷密度の不均一化が生じ、このために面間でも静電反発のエネルギーを極小化するように整列する、という新しいメカニズムを考察することができた。 一方、表面原子はバルク原子とは配位数が異なるため、マルチサイトと見なせる。本年度、われわれは遷移金属単結晶の高分解能角度分解光電子分光実験により、表面原子に生じる特異な電子状態を明らかにした。 来年度は本年度得られた研究成果を論文として公表する。
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Research Products
(14 results)