2005 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ多孔体を用いた水素量子液体の実現と超流動の探索
Project/Area Number |
17654069
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
白濱 圭也 慶應義塾大学, 理工学部, 助教授 (70251486)
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Keywords | 水素 / 超流動 / ナノ多孔体 / ボース・アインシュタイン凝縮 / 量子液体 / 量子固体 |
Research Abstract |
本研究は、新しい超流動およびボース・アインシュタイン凝縮現象の発見を目指し、ナノメートルサイズの微細空間に閉じこめた水素分子(H_2)に期待される量子効果を、圧力温度相図の決定と熱的・動力学的特性の測定から実験的に調べるものである。具体的には、水素をナノ細孔に閉じこめることで固化が抑制されて過冷却液体状態が実現し、三重点の温度が大きく低下、場合によってはヘリウムの場合と同様に、三重点が消失する可能性があると予想している。 平成17年度はまずこの過冷却効果を調べるため、2ナノメートル程度の微細孔を持つナノ多孔質ガラス中の水素の圧力温度相図を定積圧力の精密測定により作成することを試みた。その結果、バルク固液共存線(13.8K付近)よりも低温の9.5Kおよび11.6Kで、圧力が異常な極小を持つことを見いだした。この結果は多孔質ガラス中の水素が過冷却状態にあり、かつ何らかの相転移等の状態変化を起こしている可能性を示唆するものである。しかし現状の圧力測定装置では、多孔質ガラス外部のバルク水素が固化する際の圧力の大きな減少を避けられず、圧力セル内の固体水素がひび割れや空洞を有している可能性がある。この問題を解決して正確な圧力測定を行うため、現在圧力測定セルの改良を行っている。この作業は本年度中に完了し、平成18年度はこの改良型装置により正確な圧力測定を行う。さらにこの結果に基づき、規則的な3次元細孔ネットワークを持つナノ多孔体を用いた実験や、ねじれ振り子法による超流動の直接探索を検討している。 以上の研究成果は、平成17年11月に行われた東京大学物性研究所短期研究会「固体における水素の科学」において発表し、また平成18年3月の日本物理学会年次大会、同年8月の量子流体固体国際会議(QFS2006、於京都)で発表の予定である。また学術論文誌への投稿を準備中である。
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Research Products
(7 results)