2005 Fiscal Year Annual Research Report
多体相互作用するコロイド微粒子の集団的、協調的な異常ブラウン運動の起源
Project/Area Number |
17654072
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
曽越 宣仁 埼玉大学, 理学部, 助手 (10361396)
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Keywords | 微粒子 / ダイナミクス / コロイド結晶 / フォトニック結晶 / 格子振動 / 光散乱 |
Research Abstract |
本研究ではコロイド微粒子を純水に分散させた系において、微粒子問の相互作用を強めたときの微粒子の集団の運動ダイナミクスについて詳しく検討している。この系では微粒子間の静電反発力によって、粒子が自発的に結晶のような秩序相を形成する。本研究の準備段階から興味を持っていた点は、光散乱法の一つであるレーザードップラー法を用いて、粒子の運動を評価したときに、微粒子が自己組織化した場合において、見かけ上粒子の運動性が10倍ほど大きくなることが分かっていたが、その原因について検討した。粒子濃度や、粒子間の相互作用の大きさを実験的に調節したところ、分散液の無秩序相から秩序相への転移で運動性が大きくなる。秩序相では微粒子は結晶ポテンシャルに閉じ込められブラウン運動が抑制される。一方で、粒子間の相互作用により微粒子集団の同期した振動モードが熱的に励起されている。ただしこの振動モードは溶媒の粘性によりただちに減衰させられている。この結果、非常に速い時間スケールでの格子振動の生成消滅による散乱光の揺らぎが生じていることが分かった。このことを裏付ける実験結果として、非常に低い振動数の格子振動の緩和を測定すると、散乱光の揺らぎは顕著にゆっくりとなった。すなわち格子振動の緩和が速いために大部分の時間において微粒子はポテンシャルの極小点で静止していることを示唆する。このようにして微粒子の運動性の見かけの上昇は、格子振動の速い緩和として理解することができた。この結果は、現在注目を集めている微粒子を自己組織化した薄膜などの機能材料の形成プロセスの制御に役立つ可能性があると考えられる。この成果は、現在論文にまとめ投稿中である。今後の展望として、申請書にも書いたように、微粒子間の相互作用に、静電的な相互作用ではなく磁気的な相互作用を取り入れて微粒子の集団運動を評価すること計画している。
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