2006 Fiscal Year Annual Research Report
非弾性X線散乱法による金属-非金属転移に伴う量子ゆらぎの観測
Project/Area Number |
17654075
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
乾 雅祝 広島大学, 大学院総合科学研究科, 助教授 (40213136)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星野 公三 広島大学, 大学院総合科学研究科, 教授 (30134951)
梶原 行夫 広島大学, 大学院総合科学研究科, 助手 (20402654)
細川 伸也 広島工業大学, 工学部, 助教授 (30183601)
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Keywords | 溶融塩 / 非弾性X線散乱 / 液体アルカリ金属 / 金属-非金属転移 / 動的構造 / 溶融塩化セシウム |
Research Abstract |
非弾性X線散乱により測定された高温高圧下の流体水銀の動的音速が、金属-非金属転移点近傍でのみ超音波で測定された断熱音速より3倍速くなる。この特異な現象が金属-非金属転移に普遍的に起こるかどうか調べるため、溶融アルカリハライドにアルカリ金属を添加した、金属-溶融塩混合系に注目して、非弾性X線散乱実験を行う。このためサファイア製試料容器の開発を行ってきた。温度800℃ではサファイアとアルカリ金属を含む試料は反応しないことを確認した。しかしサファイアを接着するのに用いるパウダーガラスと試料との反応が無視できないことがわかった。この問題を解決するため試料容器の開発を続けている。本年度は、試作した試料容器を用いてアルカリ金属を含まない溶融塩化セシウムの非弾性X線散乱実験を行い、動的構造を調べた。観測された低波数領域の縦音響モードの分散は、超音波で測定された断熱音速より70%も大きな正の分散を示すことが明らかになった。これは流体水銀の金属-非金属転移点近傍で観測された3倍には遙かに及ばないものの、通常の液体金属の10-20%に比べればかなり大きな値である。溶融塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの先行研究でも50-70%の正の分散が報告されている。粘弾性理論では、液体といえども短い時間空間スケールでは固体的な振舞いをすることが正の分散の起源であると考えられている。溶融塩の場合、正、負のイオンが液体中でもイオン結晶のように交互に配列した化学的短距離秩序が保たれていることが、部分構造研究から明らかにされている。このようなイオン結晶的な局所構造が、今回観測された大きな正の分散に大いに関与していると考えられる。
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Research Products
(6 results)