2005 Fiscal Year Annual Research Report
地球の気候システムにおけるエントロピー最大生成説の検証とその一般化
Project/Area Number |
17654090
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小澤 久 広島大学, 総合科学部, 助教授 (30371743)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下川 信也 防災科学技術研究所, 主任研究員 (40360367)
沢田 康次 東北工業大学, 情報通信工学科, 教授 (80028133)
開發 一郎 広島大学, 総合科学部, 教授 (60160959)
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Keywords | 気候システム / 熱力学 / エントロピー |
Research Abstract |
今年度は,海洋の大循環モデルを用いた数値実験を行い,同一の境界条件の下で出現する多重定常状態の間での遷移課程における有効エネルギーの散逸率(エントロピー生成率)の変化の様子を研究した。 研究の結果,システムの境界に小さい擾乱を加えると,エネルギー散逸率の小さい状態から大きい状態へと優先的な変化が起きる事,そして向きが逆の擾乱を加えても元の状態には戻らない事がわかった。この変化は,時間的に元の状態に戻らないという意味で「非可逆性」をもった変化であると考える事ができる。そして,この非可逆的変化に伴って大循環の構造が発達し,その結果エネルギー散逸率が増加している事が明らかになった。これらの結果は,エネルギー散逸率(エントロピー生成率)が,非線形非平衡開放系の相対的安定性を表す指標になる可能性を示している。これらの成果の一部を,昨年の12月にアメリカで開催された国際学会で発表し,またドイツのSpringer社から出版された英文書籍の第10章の中で発表した。また,一連の研究成果を紹介する日本語の解説論文を2編出版した(平成17年度の研究成果参照)。今後,このエネルギー散逸率の最大化の物理的仕組みを,理論と実験の両面から詳しく研究していく予定である。
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