2006 Fiscal Year Annual Research Report
地球の気候システムにおけるエントロピー最大生成説の検証とその一般化
Project/Area Number |
17654090
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小澤 久 広島大学, 大学院総合科学研究科, 助教授 (30371743)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下川 信也 防災科学技術研究所, 主任研究員 (40360367)
沢田 康次 東北工業大学, 情報通信工学科, 教授 (80028133)
開發 一郎 広島大学, 大学院総合科学研究科, 教授 (60160959)
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Keywords | 気候システム / 流体システム / 熱力学 / エントロピー |
Research Abstract |
今年度は,海洋の大循環モデルを用いた数値実験を継続して行い,外部からの擾乱の強さや向き,そして擾乱を加える場所に対する海洋循環の応答を詳しく調べた。研究の結果,海洋循環は,循環の沈み込み部分への擾乱に強く影響を受ける事,そして沈み込み部分へ淡水擾乱を加えると循環が崩壊し,全く新しい循環に変化する場合がある事がわかった。新しく形成された循環は,エントロピー生成率の小さいやや不安定な循環であり,外からの擾乱を加えるとエントロピー生成率の大きい強い循環へと変化していく事がわかった。この後者の変化は,エントロピー生成率(有効エネルギー生成率)増大化の傾向と一致する事がわかった。 数値実験と合わせて理論的な解析を行った。その結果,有効エネルギーがシステムに蓄積されて運動が加速する場合,システム自身のエントロピーが減少する事が理論的に示された。この結果は,流体システムの中で循環が強化し発達する際に,システム自身のエントロピーが減少して不均一な速度と温度構造が形成されるという経験的事実を上手く説明する事がわかった。 以上の成果を,昨年の夏にクロアチアのSplit大学で開催された国際学会と,中国の北京で開かれたAGU Western Pacific Geophysics Meetingsで発表した。今後,流体システムの中で秩序構造が形成される仕組みを,実験と理論の両面から詳しく研究していく予定である。
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