2005 Fiscal Year Annual Research Report
天体の海洋突入に伴う衝撃波発生の地球科学的効果の解明
Project/Area Number |
17654099
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
箕浦 幸治 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10133852)
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Keywords | 隕石衝突 / 水中衝撃波 / 海洋 / 遠洋性堆積物 / 堆積物液状化 / 数値実験 / CCD映像 / 圧力波 |
Research Abstract |
地球に捕捉された天体は,その規模が大きくかつ海洋に突入する場合には,運動エネルギーの瞬間的な消費に伴い海洋地殻を爆発的に破壊する。天体の突入に際して水中衝撃波を発生し,その効果は海洋全域に伝播する。衝撃波は,音と似通った性状を有し,海底下の音響的不連続面でエネルギーを瞬間的に散逸する。エネルギー散逸が堆積粒子に波及することにより,直上の堆積構造を攪乱する形で集積体に記録されるであろう。本研究の目的は,衝撃波発生の実験的研究をもとに,衝撃波による海底下での物質移動の機構と特別な堆積構造の出現を解明することにある。特別な堆積構造の形成が確認されれば,同様の構造を海洋堆積物中に検出することにより,連続時系列で外来飛翔体突入を解読しその規模を類推することが可能となる。本研究費利用により,様々な状況を想定して衝撃波実験を試み,堆積物粒子移動の堆積学的現象が明らかになってきた。計測パラメーターを,設備備品で導入したコンピューターを活用して解析した結果,粒子の運動特性を堆積学的に解析し,併せて購入した画像処理ソフトを活用して高速度CCD映像の解析を試みた。本研究では,天体の海洋に突入による衝撃波発生の広域的波及効果に着目している。衝撃波は,音と似通った性状を有して海中を広範囲に伝播し,海底面あるいは海底下の音響的不連続境界でエネルギーを散逸する。もしこのエネルギー散逸が堆積粒子移動に反映されるならば,衝撃波は未固結堆積層の初成構造を攪乱する形で集積体に記録されると期待される。申請者は,衝撃波が海底到達直後に堆積物物性不連続面で浸透衝撃波エネルギーが消費される現象を予察的に確認しており,天体突入による衝撃波現象は地球科学的に注目すべき考察対象となると考えられる。本年度には,緻密かつ自然再現的な衝撃波実験を東北大学流体力学研究所の現有施設を利用して様々な条件下で試行し,粒子の移動に関わる堆積現象を実験的に検証できた。予察的な試みでは不可能であった1μ秒単位でのCCD映像観察を行い,併せて高感度圧力計による圧力波観測データに基づき,衝撃波のエネルギー消費による粒子移動効果の観測に成功した。本研究でのこれらの成果を東京大学大学院複雑理工学専攻(松井孝典教授)のセミナーで総括して紹介を行い,衝突現象の物理学を扱う研究者の興味を引いた。18年度には,特に高速海洋突入の物理学的特性を解明する試みを,東京大学大学院複雑理工学専攻の施設を利用して共同研究として実施する運びとなった。
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