2005 Fiscal Year Annual Research Report
超球面アルゴリズムによる化学反応経路自動探索計算法の開発
Project/Area Number |
17655001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大野 公一 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60012499)
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Keywords | アルゴリズム / 反応経路探索 / 化学反応自動探索 / 反応経路マッピング / 化学反応シミュレータ |
Research Abstract |
化学反応は、量子化学計算に基づくポテンシャルエネルギー曲面上において反応経路を求めることによって、理解、解析、予則することができる。反応経路は、反応の遷移状態構造が分かれば容易に求めることができるため、遷移状態構造を探索する手法の開発が多くの理論化学者や応用数学者によって試みられてきた。しかし、多次元関数であるポテンシャル曲面上で遷移状態構造を見出すことは非常に難しく、効率的かつ十分信頼できる手法は存在しなかった。前年度に申請者は超球面アルゴリズムを提案し、この問題を解決する見通しを得た。今年度は引き続きその開発を続け、これまで五原子以上の系では全く不可能であった化学反応経路地図の作成を、様々な多原子系で実現し報告した。その中で、生命の起源として注目される極低温・超高真空の星間空間でのグリシン分子の生成に関して、新機構を見出した。また、超球面アルゴリズムによって得られる反応経路の情報を利用することで、振動分光の理論解析のための多次元ポテンシャル曲面を非常に効率的に構築できることが分かり、その応用のための手法開発を進め、方法の提案と応用例の報告を行った。また、キラリティーを持つ最小のアミノ酸であるアラニン分子に超球面アルゴリズムを適用したところ、四種類のD-L変換経路を見出した。これら四つは全て同様の機構に基づいており、不斉炭素から二組の置換基が外れながら結合し、その後回転してから元に戻ることによってD体がL体へと変換する。この新機構は様々なアミノ酸のD-L変換経路にも応用可能であると考えられ、超球面アルゴリズムを用いてさらに検討を行っている。
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