2006 Fiscal Year Annual Research Report
超球面アルゴリズムによる化学反応経路自動探索計算法の開発
Project/Area Number |
17655001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大野 公一 東北大学, 大学院理学研究科, 教授 (60012499)
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Keywords | ポテンシャルエネルギー曲面 / 反応経路 / 反応経路自動探索 / 遷移状態 / 平衡構造 / 超球面探索法 |
Research Abstract |
分子やクラスターの平衡構造(EQ)は、ポテンシャルエネルギー曲面(PES)上のエネルギー極小点に相当する。EQ同士(異性体同士)は、遷移状態を経由する反応経路で結ばれており、PES上の一次鞍点である遷移状態構造(TS)を探索することによって、化学反応を解析することができる。従って、EQとTSの自動探索法の開発は、分子構造と化学反応の理論解析・理論予測において非常に重要である。しかし、PESは、分子の構造変数と同数の次元を持つ多次元関数であり、PES全体をしらみつぶしに調べようとすると膨大な計算時間がかかってしまう。EQとTSを系統的に探すには、PES上の反応経路を、EQからTSへ、TSから別のEQへと辿り、次々と芋づる式に探索するのが、最も効率が良いと考えられる。しかし、EQからTSへと反応経路を辿ってPESを上る方法が存在しなかったため、EQとTSの系統的な自動探索には膨大な計算量が必要であった。本研究では、化学反応の量子原理を発見し、反応経路に沿ってPESを上ることのできる方法の開発に成功した。これにより、EQとTSの系統的な自動探索が有限の計算時間で行えるようになった。前年度は、単純な有機分子に対応する化学組成のPESへ応用してきたが、今年度は、金属原子の導入によるPESの形状の変化を調べるために、アルカリ金属原子や貴金属原子を含む有機金属化合物のPESへの応用を行った。その結果、金属原子の導入によって、様々な反応経路の活性化障壁が大きく減少し、PESの形状が大きく変化することが分かった。また、キラリティーを持つ最小のアミノ酸分子であるアラニン分子に応用し、D体からL体またはL体からD体への熱変換反応経路を4種類見出すことに成功した。
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