2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17655003
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
中林 誠一郎 埼玉大学, 理学部, 教授 (70180346)
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Keywords | ナノ気泡 / 固液界面 / 表面張力 / 線張力 / ラプラス圧 / 原子間力顕微鏡 / Si(111) / ブタン |
Research Abstract |
固体液体界面に特異的に存在するナノメータサイズの気泡(ナノバブル)を、走査型原子間力顕微鏡により直接観測した。気泡のように、柔らかく、かつ、極めて変形しやすい対象が、測定可能となったのは、原子間力顕微鏡をQ値制御法などにより著しく性能を向上させたことによる。極めて簡単な計算(気体の状態方程式)により、気泡内圧を1気圧と仮定すると、ナノ気泡内の気体分子総数は、1000分子程度と極めて少ない。1000分子で、気泡が形成されるのは、極めて不思議である。ところが、気泡半径が小さいと、表面張力による圧縮効果により、気泡内圧は、数万気圧になると予想される(ラプラス圧)。このような高い内部圧力と、固気界面の表面エネルギー、固気液体3相界面の線張力が拮抗してナノバブルの安定性は保たれる。平成17年度では、特にシリコン(111)面上のブタンナノ気泡に注目した。多重反射赤外分光測定により、10-100nmのブタンナノ気泡では、気泡内のブタンガスは、ラプラス圧により気体状態を保てず、液体化していることが明らかになった。ナノバブルは、実は身の回りの自然にある一般的な現象であるにもかかわらず、観測の方途が無かったために、長い間知られていなかった極めて特異な現象である。ナノバブルの存在を考えると、歴史的な経緯から経験的に安定性が保証されて多く用いられてきた界面は、バブルが発生しない条件を巧みに利用していることが判る。たとえば、標準水素電極における、フラクタル表面を有する白金黒、などがそうである。本研究は、ナノ気泡を主題として、これらの経験則を再構成すると共に、ナノ気泡の新たな応用展開を目指すところに最大の特徴がある。
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Research Products
(7 results)