2005 Fiscal Year Annual Research Report
芳香族エーテルの炭素一酸素結合切断を経る新規触媒反応の開発
Project/Area Number |
17655042
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
垣内 史敏 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70252591)
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Keywords | 芳香族エーテル / 炭素-酸素結合切断 / 遷移金属錯体 / 炭素-炭素結合生成 / 触媒反応 / 有機ホウ素化合物 / アルキル化反応 / アリール化反応 |
Research Abstract |
芳香族炭素-酸素結合は、結合エネルギーが100kcal/mol以上あり、通常切断が困難な結合である。このため芳香族エーテルなどの活性化されていない炭素-酸素結合を合成反応に利用することは困難である。本研究では、ヘテロ原子の遷移金属への配位を利用し、不活性芳香族炭素-酸素結合の切断を行い、様々な有機金属化合物やエノレートアニオン種との反応による、炭素-炭素結合生成を行う新しい型の触媒反応の開発を目指し検討を行った。 まず、RuH_2(CO)(PPh_3)_3とオルトフェノキシピバロフェノンとの反応により、炭素-酸素結合が切断された錯体を合成し、その構造をX線解析により明らかとした。炭素-酸素結合の切断を直接観測した研究はこれまで報告されておらず、興味ある成果であると考えている。 炭素-酸素結合が切断され、Ru-OR種が発生することが明らかとなったので、次にこの化学種とエノレートアニオンとを反応させることにより、炭素-炭素結合生成を行う新しい型の触媒反応の開発を検討した。オルトメトキシビバロフェノンとエステルのエノレートとの反応をRuH_2(CO)(PPh_3)_3を触媒に用いて検討した。種々検討を行ったが、これまでのところ目的とする炭素-炭素結合生成反応の開発にはいたっていない。しかしながら、これら一連の研究の途上で、炭素-酸素結合と炭素-水素結合を選択的に切断し、そこに異なった炭素基を導入できる新しい型の触媒反応を開発することができた。例えば、オルトメチルアセトフェノンとトリメチルビニルシランおよびフェニルボロン酸エステルをRuH_2(CO)(PPh_3)_3触媒を用いて反応を行うことにより、炭素-水素結合部位にアルキル基を、炭素-酸素結合部位にフェニル基を選択的に導入できることを明らかとした。この反応は、種々のオレフィンや有機ボロン酸エステルとの組合せで行うことができることを明らかとした。
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