2005 Fiscal Year Annual Research Report
擬ハロゲン架橋金混合原子価錯体による2波長同時励起光誘起超伝導の探索
Project/Area Number |
17655057
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小島 憲道 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60149656)
|
Keywords | 光誘起絶縁体・金属転移 / 光誘起原子価転移 / 光誘起相転移 / 混合原子価 / 電荷移動相互作用 / 電荷移動遷移 / 金混合原子価錯体 / 超伝導 |
Research Abstract |
ペロブスカイト型構造のハロゲン架橋金混合原子価錯体Cs_2[Au^IX_2][Au^<III>X_4](X=Cl,Br,I)は常圧では分子性結晶の性格を持つ絶縁体である。Au^Iは直線二配位的な八面体サイト、Au^<III>は平面四配位的な八面体サイトにあるCs_2[Au^IX_2][Au^<III>X_4]の原子価状態および結晶構造に関するこの様な特徴は、Ba_<1-x>K_xBiO_3など酸化物超伝導体の母材であるBaBiO_3の特徴と酷似しており、数GPaの圧力下で混合原子価状態(Au^I,Au^<III>)から単一原子価状態(Au^<II>)へ原子価転移を起こし、金属相が現れる。また、高温高圧下で出現する立方晶金属相は常温常圧下で準安定状態として存在する。また、Cs_2[Au^IBr_2][Au^<III>Br_4]において、Au^I-Au^<III>間電荷移動遷移に相当する光照射によって混合原子価状態(Au^I,Au^<III>)から単一原子価状態(Au^<II>)への光誘起相転移が高圧下で起こることをラマン分光法により発見してきた。 本研究では、室温・真空中という条件の下で、Cs_2[Au^IBr_2][Au^<III>Br_4]において、Au^I-Au^<III>間電荷移動遷移に相当する光照射によって混合原子価状態(Au^I,Au^<III>)から単一原子価状態(Au^<II>)への光誘起相転移が起こることを光電子分光法により見出した。室温・真空中で起こるCs_2[Au^IBr_2][Au^<III>Br_4]の光誘起原子価転移は、表面の電子状態がバルク結晶とは全く異なっていること、室温・真空中で光により絶縁体から金属に変換できる可能性を示唆している。次に、Cs_2[Au^IBr_2][Au^<III>Br_4]で見出した光誘起原子価転移の研究を発展させるため、Au電子状態を制御することを目的として、架橋ハロゲンを制御した新規混合原子価錯体Cs_2[Au^IX_2][Au^<III>Y_4](X,Y=Cl,Br,I,etc.)の開発を試み、合成法を確立した。即ち、Cs^+,[Au^IX_2]^-,[Au^<III>Y_4]^-を有機溶媒中で反応させることにより新規ヘテロハロゲン金混合原子価錯体Cs_2[Au^<I>X_2][Au^<III>Y_4](X,Y=Cl,Br,I)を合成することに成功した。実際、Cs_2[Au^II_2][Au^<III>Br_4]のラマンスペクトルには、[Au^II_2]および[Au^<III>Br_4]の対称伸縮振動モードのスペクトルが現れるが、[Au^IBr_2]および[Au^<III>I_4]の対称伸縮振動モードのスペクトルは現れていないこと、また、ダイヤモンドアンビル(DAC)を用いた高圧下X線構造解析によりCs_2[Au^ICl_2][Au^<III>I_4]が7GPaで混合原子価状態(Au^I,Au^<III>)から単一原子価状態(Au^<II>)への圧力誘起原子価転移を起こしていることを明らかにし、Cs_2[Au^II_2][Au^<III>I_4]およびCs_2[Au^ICl_2][Au^<III>Cl_4]の圧力誘起原子価転移がそれぞれ5.5GPaおよび12GPaであることから、ab面内の2次元的な電荷移動相互作用が圧力誘起原子価転移を誘起していることを明らかにした。
|