2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17655071
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
辻井 薫 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (40360945)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 剛 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (10300899)
厳 虎 北海道大学, 電子科学研究所, 学術研究員 (60374667)
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Keywords | ゲル / ゲル電気泳動 / 二分子膜 / 組織化重合 / 重合性界面活性剤 / アクリルアミド |
Research Abstract |
重合性界面活性剤イタコン酸ドデシルグリセリル(DGI;n-C_<12>H_<25>OCOCH_2C(=CH_2)COOCH_2CH(OH)-CH_2OH)は、少量のイオン性界面活性剤の存在下で、サブミクロンの距離を隔てた規則的な二分子膜(ラメラ液晶)を形成し、可視光の回折によって発色するという面白い現象を示す。さらにアクリルアミド(AAm)、メチレンビスアクリルアミドが共存する水溶液中で重合することによって、二分子膜構造を維持したままアクリルアミドゲル中に固定化できる。この二分子膜固定化ゲルは、世界中で当研究室にしか存在しないユニークな材料である。このユニークなゲルを、ゲル電気泳動基材として応用するのが本研究の目的である。 上記の目的を達成するために、二分子膜固定化ゲルを使ってSDS-アクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)の実験を行っている時、全く予期していなかった新しい現象に出くわした。それは、ゲル電気泳動の過程で、二分子膜がゲル中から流れ出してしまうという現象である。この事実は、DGI分子とAAm(及び架橋剤)分子は共重合しておらず、別々にホモポリマーを作っていることを示唆している。何故なら、もしDGIポリマーがAAmゲル網目と共有結合していれば、決してゲル中から流れ出すことはないからである。DGIとAAmおよび架橋剤の重合は、同一溶液中で行っているにも関わらず、共重合することなく別々のホモポリマーを形成することは、これまで全く観察されていない新しい現象であり、大変興味深い発見である。 上記のDGIとAAmの独立重合を証明するため、DGIポリマーの同定を行った。サンプルとしては、DGIのみを水溶液(ラメラ液晶状態)で重合したホモポリマー、DGIとAAmの水溶液を架橋剤なしで重合したポリマー、更に、SDS-PAGEで陽極側に流出してきたポリマーを用いた。同定は、^1H-NMRとIRによって行った。NMRおよびIRのスペクトルは、上記の三つのサンプルでよく一致しており、DGIモノマーとは全く異なるものであった。これらの結果から、DGIとAAmは共重合しておらず、別々のホモポリマーを形成していることが明らかになった。 上記の興味深い現象の原因は、DGIモノマーの自己組織化(二分子膜)構造にあると考えられる。つまり、DGIモノマーは二分子膜を形成することによって組織化されており、分子内の重合基が互いに近い位置に並んでいるために優先的に重合される結果、DGIのホモポリマーが得られるものと思われる。分子が組織化された状態で進行する反応は、特に生体内で重要な役割を果たしていると予想される。生体内の精密な自己組織化反応に比べれば、本初究の結果はまだまだ単純なものであるが、分子が自己組織化されることによって化学反応が制御されるという意味では、最もシンプルな例を与えているとも考えられ、大変興味深い。 次年度は、本来の目的であるゲル電気泳動の研究に注力したい。
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