2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17656022
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
五神 真 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (70161809)
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Keywords | 応用光学・量子光工学 / 共焦点顕微鏡 / 原子・分子物理 / 光源技術 |
Research Abstract |
電荷移動錯体はドナー分子とアクセプター分子の組み合わせによってその物性が多彩に変化することから、化学や物性物理学の研究対象として長く研究されてきた。本研究はその最小単位である単一ドナー・アクセプター分子対の孤立化を世界に先駆けて行い、その基礎物性を明らかにし応用の可能性を探るものである。孤立化された錯体分子対は量子光学的には孤立2準位系として作用するので、単一ドットや単一分子と同様に単一光子発生源として利用できる。単一分子系では分子の褪色が問題となっているが、錯体分子対では個々の分子内の遷移よりも低エネルギーの光子を発生することから褪色寿命が著しく延びることが期待できる。また分子対の配置の制御などにより制御可能な単一光発生源とすることが可能となると考えられる。 本研究では、固体マトリックス中や基板上にドナー分子とアクセプター分子を希薄に分散させることにより、単一のドナー分子とアクセプター分子の対からなる単一錯体分子を孤立固定化する技術の開拓を進めた。この際に、ドナー分子、アクセプター分子が実際に"対を形成し"、"孤立化している"ことを確認することが重要な問題となる。本研究では、背景光の除去という観点からマトリックスポリマーの不純物除去を徹底的に行った。市販のポリマー材料には未知不純物が混入していることが明らかとなり、高純度ポリスチレンを自前で合成し使用した。測定はレーザーを光源とする共焦点顕微鏡によって蛍光観察を行い、2次元画像において孤立輝点の分布を観察することに成功した。また、冷却CCDを備えた高感度分光装置で孤立基点の分光スペクトル観察を行った。これまで使っていたピエゾステージでは位置の再現性が悪く、系統的な実験を行うのに適さなかったため、本研究費でフィードバックつきのピエゾステージを導入し、位置の再現性を十分に得られる実験系を再構築した。その結果、系統的に基礎データの収集が行えるようになり、統計的に発光の起源がドナー・アクセプター分子対に起因することが明らかになった。また、この孤立化された分子の蛍光観察を行い、そのスペクトル形状、発光の光子統計を調べ孤立分子対の制御法の探索もおこなった。
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