Research Abstract |
本研究では,非破壊,迅速,簡便な光音響法を使用して,皮膚の熱浸透率の生体内測定を試みた.発生する信号は微小であるため,光音響セルを用いて気体を密閉して測定を行なう.本研究では開放型の光音響セルを開発した.このセルは,試料に押し当てるだけでセル内部を密閉することができる.そのため,試料を加工する必要がなく,皮膚をあるがままの状態で測定する事が可能である. 6人の被験者の複数部位を対象に,皮膚の熱浸透率測定を行なった.本研究で得られた熱浸透率はこれまで報告されている値と同程度であった.測定は4回実施した. t検定(有意水準5%)を用いて,部位により有意な差があるかどうかを検証した.その結果,被験者Aの「手のひら,かかと」と「それ以外の部位」の間に有意な差があり,被験者Cの「手のひら,かかと,指先」と「腕」の間に有意な差がある事がわかった.また,被験者A, Cともに「かかと」,「手のひら」の熱浸透率は「腕」よりも低かった.以上のように,皮膚の熱浸透率には部位による差が見られた.かかと,手のひらの熱浸透率が他の部位よりも低い傾向は,他の研究者の測定結果にも見られる. t検定(有意水準5%)を用いて,被験者により有意な差があるかどうかを検証した.その結果,腕は「A」と「B, D」との間に,手のひらは,「A, E」と「C, D」との間に有意な差があるなど,個人差が確認された.また,全ての被験者において手のひらの熱浸透率は腕よりも低かった. 本研究では、以下のことが結論として導かれた.光音響法により,人体皮膚の熱浸透率の生体内測定が可能である.光音響法を用いて皮膚の熱浸透率を測定したところ,熱浸透率の部位差や個人差を見出すことができた。
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