2005 Fiscal Year Annual Research Report
ポリマーブラシへタウリンを導入して液透過流束とタンパク質吸着量とを両立させる研究
Project/Area Number |
17656249
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
斎藤 恭一 千葉大学, 工学部, 教授 (90158915)
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Keywords | ポリマーブラシ / 多孔性基材 / 放射線グラフト重合 / タウリン / 両性電解質 / 透過流束 / タンパク質 / 吸着材 |
Research Abstract |
タウリンはNH2CH2CH2SO3Hという化学構造をもち,スルホン酸基とアミノ基を分子内に併せもつ両性電解質である。多孔性膜(精密ろ過用に市販されている中空糸状の膜,空孔率70%,孔の直径0.5μm)の孔内面に付与したエポキシ基をもつポリマーブラシ(接ぎ木高分子鎖とも呼ばれる)に,タウリンを反応させると,タウリンのアミノ基によりエポキシ基が開環してタウリンがグラフト鎖に導入された。こうして両性電解質タウリンを固定した多孔性膜を作製できた。 これまでスルホン酸基をポリマーブラシに導入するには,亜硫酸ナトリウムを使ってエポキシ基を開環させていた。得られた多孔性膜では強酸性カチオン交換基であるスルホン酸基同士の強い反発によってポリマーブラシが強く伸長した。そのため多孔性膜の液透過流束が大きく低下し,金属イオンやタンパク質を含む溶液を膜に透過させながら金属イオンやタンパク質を捕捉するという操作を高速化できないという欠点があった。 一方,タウリン固定多孔性膜では両性電解質の固定であるため,ポリマーブラシの伸長が抑制された。液の透過流束およびリゾチーム(等電点が11,中性付近で表面電荷がプラスになるタンパク質)の吸着容量が,スルホン酸基単独固定多孔性膜に比べて,タウリン固定多孔性膜では,それぞれ8および0.7倍となった。タンパク質吸着容量を保持しつつ,液の透過性を大きく改善できた。さらに,タウリン固定多孔性膜は,リゾチームの拡散物質移動抵抗を無視できる優れた吸着特性を示した。吸着したリゾチームは1M塩化ナトリウムによってすべて溶出された。
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