2007 Fiscal Year Annual Research Report
ポリマーブラシヘタウリンを導入して液透過流束とタンパク質吸着量とを両立させる研究
Project/Area Number |
17656249
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
斎藤 恭一 Chiba University, 大学院・工学研究科, 教授 (90158915)
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Keywords | ポリマーブラシ / 多孔性材料 / 放射線グラフト重合 / タウリン / 両性電解質 / 透過流束 / タンパク質吸着 / 親水性界面 |
Research Abstract |
タウリン(NH2CH2CH2SO3H)は,分子内にアミノ基とスルホン酸基とを併せもつ両性電解質である。本研究では,多孔性材料(ここでは,精密濾過用の中空糸状の多孔性膜,空孔率70%,孔の直径0.5μm)の孔内部の表面にエポキシ基をもつ高分子鎖を接ぎ木(グラフト)し,そこヘタウリンを導入した。このとき,タウリンのアミノ基が接ぎ木高分子鎖中のエポキシ基と反応した。高分子鎖へ亜硫酸ナトリウムを反応させて得られるスルホン酸基のみが導入された接ぎ木高分子鎖を有する多孔性中空糸膜と比較して,タウリンが導入された接ぎ木高分子鎖を有する多孔性中空糸膜は,液体の透過性(透過流束)が一桁高く,それでも接ぎ木高分子内にタンパク質を多層で捕捉することを実証した。 タウリンの導入で得られた"グラフト鎖内での分子内中和の効果"を,接ぎ木高分子鎖に他の電解質を導入して,"タンパク質の吸着量を極小にする高分子鎖の作製"に応用した。分子内にジメチルアミノ基とカルボキシル基とを併せもつ両性電解質であるN,N-ジメチルアミノ酪酸(N(CH3)2(CH2)3COOH)を,多孔性中空糸膜に付与した接ぎ木高分子鎖に導入した。その結果,現在,最もタンパク質の吸着量が最も少ないと報告されている"リン脂質二重膜を模擬した高分子界面"の同程度(2〜3倍)までにタンパク質の吸着量が少ない高分子界面の作製を達成できた。 多孔性膜の界面を,"タンパク質を捕捉する"性質から"タンパク質を捕捉しない"性質までに広く制御できることを示すことができた。接ぎ木高分子鎖への両性電解質の導入手法は,用途に応じた材料を簡便に作製できる点で有効である。
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