Research Abstract |
イルカは,彼らの音響探知能力(ソナー)を用いて,餌となる魚を見つけ,追跡し,食べられるか判断した上で,最終的に口で捕獲する.したがって,人工の魚群探知機以上に対象識別能力に優れていると考えられる.そこで,この能力を探り魚群探知機などに応用すれば,魚種識別能力などが向上できると考えられる.このような目的のため,平成17年度は,イルカのソナー音を人工的に送波し,金属球などからのエコーを得て,それに含まれる対象を識別するために有用な情報を探った. イルカのソナー音は,魚群探知機などで使用される単一周波数の音波でなく,20kHzから120kHzといった広い周波数範囲の成分を含む広帯域音波である.このような音波を送受するために特殊設計の広帯域送受波器を試作した.これを用い,まず水槽で反射特性が理論により明確にできる金属球のエコーを収録し,散乱振幅という広帯域の反射特性(光の色合いに相当)を求めた.この結果は,理論値によく合い,イルカのソナー音が広帯域反射特性を知るのに都合がよいことがわかった,これはちょうど,我々が色によって対象を識別できることに相当するので,イルカがこのような方法で魚種識別などを行っている可能性が高い. 金属球で方法の有効性が確かめられたので,キンギョおよびアジを用いて広帯域反射特性を計測した.それぞれに特徴ある特性が得られた.ただし,魚の姿勢や動きにより特性が大きく変わるので,今後は広帯域反射特性の時間的変化もとらえられるようにし,より対象識別がしやすい方法とし,魚群探知機などへの応用を考える.
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