2006 Fiscal Year Annual Research Report
サケ科魚類雄は自分の卵を識別しているか?-DNA解析による差別的食卵行動の解明
Project/Area Number |
17657006
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
前川 光司 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (80002301)
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Keywords | 生態学的2型 / 繁殖成功 / 差別的卵食 / マイクロサテライトDNA / 親子判別 / サクラマス |
Research Abstract |
北海道然別湖の流入河川において、24個の産卵床について産卵行動を観察した。産卵開始直前にトラップおよび電気ショッカーを用い、親魚を捕獲し個体識別した。産卵直後に産卵行動に参加した残留型を捕獲し吐き戻しにより食卵数を調べた。受精卵を回収し、孵化後の仔魚についてマイクロサテライトによる親子判別を行い、親魚の繁殖成功を推定した。個体の繁殖成功は解析中であるが、現在までに解析が終了した11産卵床分、回遊型♂25尾、残留型♂42尾のデータによると、回遊型、残留型ともに大型の個体ほど繁殖成功が高い傾向にあった。残留型の繁殖成功はばらつきが大きく、大型の個体であっても繁殖に失敗する個体が多く見られた。一方、回遊型では大型の個体はほとんどの個体が繁殖に成功する傾向があった。卵食した個体は19匹(不明1)であった。卵食を行った個体は産卵床あたり1.13±0.92匹であった。食卵数は個体あたり1-8卵(N=11)であった。食卵行動を行った個体のうちメスが放卵した瞬間にスニークした個体は14個体、スニークしなかった個体は5個体であった。また、単独でメスとペアになり、明らかに放精に成功している個体によっても卵食が行われていた。12産卵床、42尾の残留型において食卵の有無および繁殖成功を測った。このうち食卵した個体は10尾であった。高い繁殖成功を得た個体によって食卵が行われていた(ロジスティック回帰、P=0.053)。残留型は受精率と関係なく食卵を行うが、残留型が食卵可能な機会は、メスが放卵してから埋めるまでの間に限られる。このため、この時問に産卵床に接近できる残留型、すなわち繁殖集団中で優位な(=繁殖成功が高い個体)によって食卵が行われたためだと考えられる。このことから、優位な残留型は自らが受精した子(卵)を食べている可能性が大きく、このリスクを回避する戦術が成り立つ理論の解明が求められる。
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Research Products
(6 results)