2005 Fiscal Year Annual Research Report
サワガニの生息環境の違いによる間性個体の出現と生殖器官と内分泌器官の関係
Project/Area Number |
17657008
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
武富 葉子 熊本大学, 理学部, 講師 (90040112)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 徹 熊本保健科学大学, 教授 (70369122)
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Keywords | サワガニ / 間性個体 / 造雄線 / 精巣 / 微細構造 / 生理活性 |
Research Abstract |
サワガニGeothelphusa dehaaniは雌雄異体であり、雄は外部性徴として第一腹肢が交接肢となっている。しかし雌の外部性徴である第三歩脚に小さな雌性孔を有した雄のカニの出現をみた。この雄を間性個体(intersex)の雄とよぶことにした。間性個体の雄について、雄の一次、二次性徴を調節していると考えられている造雄腺と生殖腺(精巣)の関係について調べた。造雄腺は甲殻類の雄に特有な内分泌器官であり、サワガニの造雄線は第5歩脚の基部内の輸精管末端部に付着して存在していた。色は乳白色、細長いひも状の形をしている。光学顕微鏡観察では、数10個の細胞からなり、核、細胞質ともヘマトキシリン染色でよく染まった。 電子顕微鏡観察では、この腺細胞の微細構造はよく発達した層板状の粗面小胞体、ゴルジ体によって特徴ずけられた。また電子密度の高い顆粒が観察され、これらの構造はペプチドホルモンを分泌する細胞によく似ており、造雄腺ホルモンがペプチドホルモンであることを示していた。一方、intersexのカニの造雄腺はひも状の形が膨潤していた。光学顕微鏡観察では、造雄腺を構成する細胞は、正常な細胞が少なく、核や細胞質の染色性が正常の細胞と異なり、核が異常に濃染したり、細胞質がほとんど染色されなかった。Intersexの造雄腺の微細構造は、核の形が変化し細胞質内に細胞小器官が少なく、正常の造雄腺の細胞とは異なり活性が低い像を示していた。 Intersex個体は造雄腺の機能が低下したことにより、二次性徴が影響を受け、雄に雌性生殖孔が生じたと考えられる。即ち、造雄腺の影響がまず二次性徴に現れていることが推測された。さらに一次性徴の精巣への影響を調べているが、多数の精子の中に卵細胞がわずかに混在しているのが観察された。これらの結果は、日本動物学会(2006、筑波)や環境ホルモン学会(2006、東京)で発表した。今後精子形成過程について詳細に調べ、造雄腺の変化が一次性徴、二次性徴に及ぼす影響を明らかにする必要がある。また、造雄腺が変化を起こす原因について、生息環境の調査も必要である。
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Research Products
(1 results)