2005 Fiscal Year Annual Research Report
ホヤ精子に存在する自己マーカーの構造解析と自己非自己認識における役割
Project/Area Number |
17657026
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
稲葉 一男 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 教授 (80221779)
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Keywords | ホヤ / 精子 / 受精 / 自家不和合性 / 免疫 / 補体 / ゲノム / プロテオミクス |
Research Abstract |
本年度は、原索動物カタユウレイボヤの個体ごとに異なる精子分子の同定と構造解析を目的に行った。精子のTriton X-100可溶性画分をSDS-電気泳動により分離したところ、分子質量が60kDa付近と150kDa付近に、精子毎に移動度が異なるタンパク質バンドが検出された。これらを含むゲル領域を大量に調製し、部分アミノ酸配列の決定を目的に、トリプシン処理後に逆相クロマトグラフィーに供した。しかしながら、良い分離が得られず、いくつかのピーク解析の結果からも、アミノ酸配列を得ることができなかった。この原因として、含まれているタンパク質が不均質なこと、糖鎖修飾などを伴っている可能性が高いことなどが挙げられる。来年度は、酵素による糖鎖の除去や、自家受精による単一分子の調製を行うことにより、これらを改善し、アミノ酸配列の決定と構造解析を行う予定である。一方、本研究では、ホヤ受精における自家不和合性のメカニズムを解明する目的で行ったが、これには原始的な免疫機構が関与することが昔から指摘されてきた。これに関連して、本年度は上記研究の遂行中に、補体系の分子であるC6に相同性をもつ分子がホヤの精巣で発現していることを見いだした。C6様分子に対する抗体を作製し、局在を調べたところ、精子頭部に局在していることがわかり、受精ひいては自家不和合性への関与を示唆する結果が得られた。また、精子中に複数のC6様分子が存在することも明らかになった。上記の精子上に存在する自己マーカーの研究と合わせ、免疫と生殖の関わりを知る上で、来年度に検討する必要がある。
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