2005 Fiscal Year Annual Research Report
0.2ミクロンより小さい細菌(ナノバクテリア)の多様性と系統分類に関する研究
Project/Area Number |
17657032
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
長沼 毅 広島大学, 大学院生物圏科学研究科, 助教授 (70263738)
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Keywords | 極微小生物 / バクテリア / アーキア / 深海 / 熱水噴出孔 / 16S rRNA遺伝子 / 分子系統 |
Research Abstract |
海底火山(水曜海山)や背弧海盆(マリアナ・トラフ)などの深海熱水噴出孔で採取した熱水/海水の混合試料から、0.2ミクロン以上の画分と0.1〜0.2ミクロンの画分を取得し、それぞれの画分からバルクDNAを抽出して、従来的な微生物DNAと本研究のターゲットである極微小生物DNAを別個に獲得した。このDNAについて、原核微生物の系統分類に汎用されるバクテリアとアーキアの16S rRNA遺伝子をPCR法により増幅したところ、バクテリア・アーキアともに16S rRNAが増幅されたので、各々の試料・画分のPCR産物について50個前後を単離し、その近全長塩基配列を決定した。ここで、アーキア遺伝子も検出されたことから、バクテリア(細菌)だけでなくアーキア(古細菌)も対象に含めることとし、研究課題名にあるナノバクテリアという呼称ではなく、「極微小生物」という呼称を用いることにした。 16S rRNA遺伝子の結果、バクテリア・アーキアともに新規遺伝子が多数発見され、極微小生物が新種の宝庫である可能性が示唆された。特にバクテリアでは「培養例はまだないが遺伝子解析からその存在が強く示唆される新規微生物グループ」であるcandidate divisionという推定上の細菌門に属する16S rRNA遺伝子が顕著であった。また、アーキアでは生物進化の系統樹の根元近くから深く分岐しdeep-branchingと呼ばれるような16S rRNA遺伝子が見つかり、極微小生物の中に現生の生物の「共通祖先に最も近い」ものが含まれている可能性が示唆された。現在、その結果をまとめた論文原稿を専門学術誌に投稿中である。また、今後はそのような微生物の単離・培養に向け努力する予定である。
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