2005 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白質の凝集を防止する低分子化合物の構造解析への応用と新規合成
Project/Area Number |
17657034
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
若松 馨 群馬大学, 工学部, 教授 (40222426)
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Keywords | 蛋白質 / 凝集 / NDSB / 構造生物学 / NMR / X線結晶解析 / ゲル化 / 重水素化 |
Research Abstract |
蛋白質の非特異的な凝集を防止するとともに安定性を向上させる低分子化合物やその使用法を開発し,構造生物学研究を推進することを本研究の目的とした.蛋白質が凝集すると質の良い結晶ができないだけでなく,溶液NMRの感度や分解能が著しく低下する.NDSB(non-detergent sulfobetain)という一群の化合物は蛋白質の凝集を防ぐ事が知られているので,NDSBの結晶化やNMRへの応用を検討するとともに,新規なNDSBを合成した. (1)NDSB自身の凝集:NDSBは界面活性化剤と異なりミセルを形成しないと予想されていたが,確認はされていなかった.動的光散乱で検討したところ,NDSB水溶液には大きな凝集体が残っている事,その凝集体は0.2μm程度のフィルターを通したり加熱する事で解離する事が明らかになった. (2)NDSBによるNMRスペクトルの改善:蛋白質の凝集を防ぐために150mM程度の塩がNMRでは添加されるが,塩を加えると極低温プローブの感度が低下する事が知られている.塩の代わりにNDSBを加えると感度を低下させる事なく,凝集を防止できる事がわかった. (3)NDSBによる蛋白質のゲル化の防止:蛋白質は濃度を上げたり低温にしたりするとゲル化する事がある.これらのゲル化は結晶作成やNMR測定で大きな障害になるが,NDSBは低濃度で蛋白質のゲル化を防止する事がわかった.その結果,今まで全くNMRスペクトルが測定できなかったサンプルについて良好なスペクトルが得られた. (4)新規なNDSBの合成:市販されているNDSBは重水素化物を合成する事が非常に困難であるので,重水素化が可能な新規なNDSBを合成した.新規なNDSBは従来のNDSBと同様に蛋白質の凝集を防止する事が確認された.また,その重水素化物も合成した.
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