2005 Fiscal Year Annual Research Report
ダイズの莢実一斉成熟と植物体の老化は窒素受給による「自己破壊」か
Project/Area Number |
17658009
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
鄭 紹輝 佐賀大学, 海浜台地生物環境研究センター, 助教授 (90253517)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有馬 進 佐賀大学, 農学部, 教授 (90140954)
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Keywords | 一斉登熟性 / 子実成長 / ダイズ / タンパク質 / 窒素 / 葉緑素 / 老化 |
Research Abstract |
ダイズの一斉登熟性は葉の老化と密接な関係がある.一般的に葉の老化は出葉が早いもの(下位葉)から順に起こるが,ダイズではなぜ莢の成熟と同調的に葉が一斉に老化に向かうのかについては,ダイズ子実の成長過程に他の作物に比べられないほど大量の窒素を必要とするため,根からの供給量(根粒固定量も含む)だけでは足りず,葉内の機能性タンパク質を壊して,その代謝された窒素を子実に転流させているために起こると提唱されているが,それを支持しない研究結果も報告されており,定説までは立証されていない.そこで本研究は,ダイズの成熟整合性の生理的要因解明に資する目的で,登熟後期に葉が同調的に老化するのは(1)窒素供給のための自己破壊なのか,それとも(2)子実の成熟によるプログラムされた「死」なのかを明らかにする.また,(3)上述のいずれの場合も,機能性タンパク質の分解が起こっているとの予測で,その誘発要因となるタンパク質の同定を行う. 平成17年度では,窒素濃度を制御する条件下でダイズを栽培し,子実肥大初期から培養液の窒素濃度を通常の1/4,及び1/16に低下した処理,さらに通常の培養液濃度を維持しながら,葉面に尿素を散布する処理を行った.その結果,窒素濃度低下区では,通常区より葉の葉緑素含量低下が早くなったが,窒素追肥区(尿素の葉面散布)では,葉の葉緑素含量低下が止められなかった.このような結果から推測すると,ダイズの子実登熟に伴う葉の老化は,窒素濃度がその遅速にやや影響するものの,本質的に左右する要素ではないことが推察された.さらに,圃場で標準栽しているダイズについて,開花後黄成長期前より1週間ごとにサンプリングをとり,各器官における窒素集積動態および集積窒素の子実への転流を調査したところ,子実肥大のある時期から葉位に関係なく葉内窒素含量が一斉に低下していた.現在,2次元電気泳動で調査中の葉のタンパク質の動態と合わせて,葉が一斉に老化する引き金を解析中である.
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